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#002 AC-HEC

花王のイノベーションは、
“同じ想いを分かち合える仲間と、
受け継がれてきたビジョン”
から生まれる。

DATE.2019.3.25
Text Edit:花王の顔 編集部
Photo:Hidetoshi Fukuoka

AC-HEC(エーシーヘック)の機能である、“汚れを落ちやすく、つきにくくする”こと。
その発想は、花王の歴史の中でも50年以上前からあったにも関わらず、実現が非常に難しいものであった。
その開発をリードしたのは、齋藤と伊森というまだ30代の若き開発者。
AC-HECのような画期的な開発は、開発者の一生の内、1つか2つか実現できればいいといわれるくらいのモノ。
彼らは、どのようにして花王が何十年も実現できなかった技術を形にし、世に出すことができたのだろうか?
また、なぜ花王が50年以上かかっても実現できていなかった技術に、今挑戦しなくてはならなかったのか?
その背景には“現在の洗濯”が直面している大きな課題があった。

実は、繊維に水が馴染みにくい化学繊維のひどい汚れは、
洗濯機で半分以下しか落とせていない。

最近利用者が増えている機能性インナーなどは、夏は涼しく冬は暖かく便利である一方、木綿と比べて皮脂などの油汚れがつきやすく、これまでの洗剤で洗っても半分以下しか汚れが落とせていなかったというデータがある(花王調べ)。

また、ドラム式洗濯機の普及や環境意識の高まりなどにより、洗濯に使われる水の量は減ってきており、これも汚れが落ちづらくなる原因となっていた。
これを解決するためには、バイオIOSのような界面活性剤の革新はもちろん、洗うたびに衣類をより水に馴染みやすく、汚れがより落ちやすくする洗剤成分の開発にも大きな期待がかかる。

与えられたミッション、汚れをつきにくく、落ちやすくする成分を作る。
手段は自由、ただしそれは花王の過去50年で
誰も開発できなかったこと。

第一弾の記事で紹介されている バイオIOSが、“汚れにすばやく吸着して落とす技術”とするならば、AC-HECの機能を、簡単に表現すると、“汚れを落としやすく、つきにくくする技術”ということができる。
言葉にするのは簡単ではあるが、“130年洗うということに向き合ってきた花王”をしても、AC-HECの実現した、“汚れを落としやすく、つきにくくする”ことは、非常に難しいものだった。

―過去の報告書を調べてみると50年以上前から、その発想がありました。ただ、今までなかなか形にすることができず、ミッションを言い渡されたとき、これは生涯をかけて研究しなければいけないかもしれないな、と感じました。

と、斎藤は研究に着手した当時を振り返る。

―手段はなんでも良いということでした。私たちの所属がマテリアルサイエンス研究所という場所であり、サステナブルに社会を作り上げていくために物質の素材からこだわるという考え方がありましたので、基本的にはそこに立脚して考えていました。
その中で、2つ注目されていたことがあり、一つはバイオIOSを使いこなすということ、そしてもう一つが、セルロースというバイオマスの活用です。(齋藤)

斎藤の言う、“セルロースは”、植物を構成する成分で、地球上に豊富に存在する有機物のひとつであり、サステナブルな資源ともいわれている。

自然と調和するというビジョンが、
セルロースにたどり着かせてくれた。

―私は、最初は違うテーマを担当していたのですが、斎藤から研究テーマについて聞いてくれと言われて、その時のプレゼンにすごく引き込まれました。
私自身は、基本的にはずっと10年間セルロースに関わる研究を行ってきましたのでセルロース自体は使い慣れた素材でしたし、純粋に環境調和型であるセルロースで、斎藤の考えが実現できたら、生活者に響くだろうな、と思いました。(伊森)

伊森の発言にその通りと頷き、斎藤が言葉を重ねる。

―僕が個人的に好きなのは、 「自然と調和するこころ豊かな毎日を目指す」という花王のビジョン。人本来とか自然本来というところの原理や、理想を求めているのが花王という会社かなと思います。
それがなければ、僕らもセルロースにはたどり着かなかったと思います。

AC-HEC、その働きで繊維は水になじんで、汚れが落ちやすくなる。

簡単にAC-HEC技術を解説すると、それはセルロースで衣類の繊維を水になじみやすくし、結果汚れが落ちやすく、つきづらくなるというものだ。それが、衣類を守ると同時に、汚れをしっかり落とすことにつながっていく。

しかし、これは簡単なことではない。
洗濯物6キロを、キャップ1杯で洗おうとする時に、衣類の繊維の面積は、簡単に計算すると、テニスコート15面にもなるという。さらに、この繊維の表面をスポイト2滴で変えなければいけないのだ。
そして、AC-HECを洗浄剤に応用すると衣類が、洗濯するたびに水になじむようになるため、どんどん汚れがつきづらく、汚れが落ちやすく、そしてきれいになっていくという。

もっと、環境に優しく、
そして洗濯がワクワクするような未来を実現したい。

洗えば洗うほど、汚れがつきづらく。洗うたびに、これまで洗濯で落とし切れなかった“洗濯負債”ともいえる皮脂の汚れが落ちていく。そんな機能を実現してくれるのがAC-HEC。その機能が実現する未来を、二人はこのように語る。

―どの洗剤を使っても汚れの落ちやすさが一緒だと思っているような人が「これ違うな」と思うようになったらいいなという願望があります。(伊森)
―これから、洗濯がよりポジティブなワクワクするような洗濯に変わっていったらいいなと思っています。(齋藤)

―今、洗剤って汚れを引きはがすために界面活性剤が入っているのですが、AC-HECのような繊維改質の技術を深めていけば、界面活性剤が少量でも、あるいは水だけでも、従来の洗剤と同等に汚れを落とせる世界が実現できるのではないのかなと考えたりして、そこまで技術を進化させたいと思っています。(伊森)

―そしてなにより、AC-HECの原材料であるセルロースは、豊富にある資源で、これを使いこなすことができれば、環境に対しても良い衣料洗剤を作ることができるのではないかと思います。(齋藤)

130年間、洗うということに向き合ってきた花王。その点で、誰にも負けないくらい真摯に“洗う”ということに向き合っていきたいと二人。

―中身で絶対にお客様を裏切りたくない。そういう意味で、その中身の技術を最大限高めていくことが私たちの仕事だと思います。(齋藤)

想いを分かち合い、認めてくれる仲間が少しずつ増え、
最後はすごい人数がAC-HECを立ち上げるために関わってくれた。

多くの研究者・開発者が、研究は基本失敗するのが当たり前で、1000個やって1個上手くいけばよいという感覚でやっているという。 「研究をやって、やって、引き当てたときの喜びを、同じ想いを持った人と分かち合える瞬間が、研究をやめられない理由」と斎藤。諦めずに続けることで、周囲を巻き込み、賛同を生み出し、一つひとつの壁を一緒に乗り越えていく。一人の天才がイノベーションを生み出すのではなく、脈々と受け継がれる企業ビジョンのもと、仲間とともにイノベーションを実現する。そんな花王らしいともいえる、イノベーションの生み出し方を二人は示してくれたようだ。

洗濯で、衣類を変える。
洗濯が、前向きに変わる。

プロフィール

齋藤隆儀(さいとうたかのり)

マテリアルサイエンス研究所4室 チームリーダー(素材価値開発)
IOS/AC-HEC複合化技術の構築、AC-HECを応用した新価値創造を担当した

伊森洋一郎(いもりよういちろう)

マテリアルサイエンス研究所3室 チームリーダー(素材合成)
セルロース素材からAC-HECを生み出す構造設計、安定生産に向けた製造検討を担当した

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