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  • #洗濯・衣類ケア #バイオIOS #SDGs #洗う #創る/素材開発 #界面活性剤 #働き方

#001 バイオIOS

花王のイノベーションは、
開発者の
“フラットに話せる人間関係と、
あきらめず突き詰める気持ち”
から生まれる。

DATE.2019.3.25
Text Edit:花王の顔 編集部
Photo:Hidetoshi Fukuoka

2019年1月23日に花王が出した1通の研究開発に関するニュースリリース。
いつもの花王の研究開発リリースは、どちらかというと無機質なのだが、
今回のタイトルには珍しく“花王史上最高”、“洗浄の世界に革新をもたらす”と、熱のこもった言葉が並ぶ。
リリースされたのはバイオIOS。それは、衣料用洗剤をはじめ、様々な“洗浄剤”の主成分となる界面活性剤だ。
130年洗浄に向き合ってきた花王が“最高”と語るこのバイオIOSはどのように生まれたのか?その革新とはどのようなものなのか?
プロジェクトをリードした、坂井、藤岡、堀の三人に訊いた。

世界の都市化や人口の増加、
生活の向上に界面活性剤は何ができるのか?

今後、世界的な都市化と人口の増加により洗剤需要は大きく増える中、洗浄成分である界面活性剤の継続増産は困難であり、2050年までに、その原料となる植物性油脂が不足すると花王では予測している。
そのような中、この研究開発はどのようにスタートしたのだろうか。

―2011年にテーマはあったのですが、ゴールが決まっていたわけではありませんでした。油脂の有効活用ということで走りだして、バイオIOSの完成にたどり着いたのですが、はじめは、ここにたどり着くと思ってはいませんでした。(堀)

―油脂資源の中でほとんど使い道がない部分を使おうという考え方からスタートしたんです。
もう30年も前からこれは課題でした。
これまで、私たちは他社と同じ部分から作った界面活性剤を使う方法しか知りませんでした。
ですので、全く新しい原料を使い界面活性剤を作ること、またそれを使いこなすことは、大変難しかった。(坂井)

これまでの界面活性剤の原料は、植物性油脂のわずか5%の量しかない油脂から作られてきた。バイオIOSでは、豊富に存在し、かつこれまで界面活性剤の原料としてほとんど使われてこなかった、固体部(パームヤシの実にある固体部分)のバイオマスを使うことで生まれている。
これは、この領域の研究者がその分子構造をみると、その革新性がすぐにわかるくらいの発明だといわれる。

これにより、2050年に向けても、原料不足の心配が減り、かつ増加する人口、生活水準の上昇にも応えられるという。
原料の革新性はもちろんであるが、その機能は私たちの生活にはどのような影響を及ぼすのか?

界面科学を突き詰めて生まれた“洗浄の革新”とは?

バイオIOSの洗浄性能について堀は、“別次元”という言葉を使い表現する。

―バイオIOSは“今までとは違う”がキーワード。今までの洗浄とは、別次元と言っても良いくらい違います。
理想の洗浄とは、少ない量の界面活性剤を水に溶かして使うことです。しかし今までは、洗浄力の高い界面活性剤は水に溶けにくく、一方、水に溶けやすい界面活性剤は洗浄力が低いという両立しない現状がありました。しかし、バイオIOSは高い洗浄力を持ったまま、水にもよく溶ける理想的な界面活性剤なのです。(堀)

堀の語る“別次元”とは具体的には3つに要約される。

I:より少ない量で汚れが落ちる。
II:水に溶けやすいので洗剤が衣類に残りにくい。
III:厳しい環境(低温、高硬度)でも洗浄できる。

バイオIOSを使うことで汚れをしっかり狙う選択洗浄が可能となり、それを地球上に多く存在する厳しい環境でも実現できるのだ。
バイオIOSのこの3つの革新について、研究開発部門を統括する長谷部は、「界面科学を突き詰めたからこそ生み出すことができた、“洗浄の革新”」と語った。
世の中を変えるようなイノベーションは一部のスター研究者が、予算も権限も人員も集中してもらい生み出すように感じるかもしれないが、そこに至る研究開発の道は、どのようなものだったのか?

―私達三人だけではなく、これまで研究を積み重ねてきた先人たちも含めて、オール花王が結集して作っている。その愚直ともいえる努力を伝えたいと感じています。

と、堀が語る。

―はじめは、みんなバイオIOSの具体的応用イメージが描けず、開発が頓挫しかけたこともありました。それでもあきらめずに検討を継続するうちに、サステナビリティにとどまらない素晴らしい特性が見えてきたんです。次第に仲間が増え、ついにこれまでにない画期的な界面活性剤の誕生につなげることができました。(坂井)

同じ研究室で、堀が原料を作り、坂井が応用活用を担当、藤岡は大量生産するためには、どうすればよいかを検討したという、三人。
その関係はリーダー、サブリーダーという役目はあれどフラットで、インタビュー中も笑顔と、率直な発言が印象的だった。
バイオIOSという、花王にとって大きな投資を伴い、基盤となる界面活性剤の開発を担うチーム。当然、プレッシャーも大きい。

―この仕事のプロだからという気持ちが、困難な中でのモチベーションになっている。(藤岡)

と藤岡がいうと、坂井が続ける。

―バイオIOSの開発を通じて、真剣に地球のことを考えたのはもちろんですが、チームで仕事をするなかで、一生懸命開発に向き合い見えないところまでのこだわりなど、花王の研究者に通底する“こだわり”に改めて自信をもちました。(坂井)

プロとしての責任感、愚直に研究に向き合う姿勢、そして職位にとらわれないフラットで自由な環境。三人の言葉だけではなく、その会話する姿から、花王の研究者としての姿勢が浮かびがってきた。

サステナビリティのその先へ。
常識を超える新技術が人々の生活を変えていく。

最後に、“バイオIOSとは何か?”と問いかけると、坂井はこう語った。

―体を洗ったり、洗濯をしたりする生活を、今までより多く国々でよりたくさんの人々が行うようになります。すると、そのままでは、地球へのダメージも大きくなってしまいます。そんな時、このバイオIOSがあれば、ダメージを少しでも減らしていくことができるのです。
そのコメントに、笑みを浮かべながら深く頷く藤岡。

バイオIOSの対象範囲は衣料用洗剤にとどまらない。
繊維にはじまり、顔、体、髪、食器、窓・床など全ての対象をきれいに変えるのが界面活性剤だとすると、それにともなう“生活”を(バイオIOSは)変えるとも言えるのだ。

地球にやさしい発明は、
衣類にもやさしい発明でした。

プロフィール

坂井隆也(さかいたかや)

マテリアルサイエンス研究所2室 主席研究員・グループリーダー(素材基盤研究)
界面化学者として、バイオIOSのサステナブル界面活性剤としての可能性を見出した

藤岡徳(ふじおかとく)

加工・プロセス開発研究所2室 グループリーダー(生産技術開発)
ケミカルエンジニアとして、バイオIOSの大量製造技術を開発した

堀寛(ほりひろし)

マテリアルサイエンス研究所2室 チームリーダー(素材価値開発)
有機合成化学者として、バイオIOSの構造・価値探索と高品質製造技術開発を担当した

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