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NEWS PICKS Brand Design メタボ改善に導く“サイクル”を回せ

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【コーヒークロロゲン酸と茶カテキン】内臓脂肪を減らす3つのステップ

  • 2021/11/08 | NewsPicks Brand Design

地球や社会が急激な変化にさらされ、多くの健康課題が生じている。生活習慣病、メタボリックシンドローム、ロコモティブシンドローム、温暖化による熱中症、SNSの発達によるメンタルヘルスへの影響など──。

特に、コロナ禍での働き方の変化によって体重増加に悩むビジネスパーソンが増えている。ウォーキングやランニング、自宅やジムで有酸素運動や筋トレを始めた方も多いのではないだろうか。

  • (写真:choochart choochaikupt/i-stock)

個々の取り組みの中で効果を実感できている方もいれば、苦戦している方もいるだろう。特に健康リスクを伴う内臓脂肪の増加は個人レベルでは解決しがたいケースも見られ、現代特有の社会問題と言っても過言ではない。

どうすれば無理することなく、効果的に内臓脂肪を減らすことができるのか。

そこで生活者に寄り添い、長年にわたって研究を続けてきた花王の知見をもとに、内臓脂肪を減らす仕組みを東邦大学上芝元教授の監修のもと、3つのステップに分けてひもといていく。

在宅ワークがもたらすコロナ太りにはリスクが

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、一気に広まった在宅ワーク。これまで毎日、通勤電車に揺られて打ち合わせや営業に出かけ、出張に費やしていた時間がほとんどなくなった結果、コロナ太り、メタボリックシンドローム(以下、メタボ)を不安に感じているビジネスパーソンが続々出てきた。

家に長くいることで緊張感が薄れ、副交感神経優位な時間が多すぎるのも原因のひとつかもしれない。

内臓脂肪とは ・胃、腸などの臓器のまわりにつく脂肪 ・体のエネルギーが不足した際に素早くエネルギーに変換される脂肪 ・たまりやすく減りやすいエネルギー源 ・代謝の低下でたまりやすくなる

メタボとは 内臓脂肪が過剰に蓄積され、高血圧・高血糖・脂質代謝異常と組み合わさり、動脈硬化進行の危険が高まる状態 1999年:世界保健機関がメタボの概念提唱 2005年:メタボ診断基準法(日本)

糖尿病・代謝・内分泌内科が専門で、東邦大学医療センター大橋病院で日々診療にあたる上芝元先生に話を聞いた。

自律神経は副交感神経と交感神経のメリハリが大事で、長く副交感神経が優位になってしまうと日中の活動量が落ち、消費カロリーも減り、内臓脂肪が増えやすくなってしまうという。

さらに、「食事で摂取するカロリーが、消費するカロリーを上回ると、余った分が内臓脂肪として蓄積される。これが基本です」と説明する。

上芝元 東邦大学医療センター 大橋病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 教授 東邦大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌学分野で診療・研究・教育を担当。診療は東邦大学医療センター大橋病院で糖尿病、内分泌・代謝疾患を担当。研究は大学院の時に副腎ホルモン関連のテーマで医学博士を取得。以後副腎・性腺ホルモン関連の研究を継続。最近はメタボリックシンドロームとテストステロンの関連に注目して、研究を行っている。

「ビジネスパーソンは通勤することでかなりエネルギーを消費しています。この時間が減ったのに、食事の量が以前と変わらなければ、明らかにカロリー過多。その結果、体重が増加し、内臓脂肪が増え、メタボの危険が増すことは明らかです。

メタボの原因である脂肪細胞が肥大・増殖し、内臓脂肪が蓄積します。それが血圧、血糖、コレステロールなどを上昇させ、結果的に動脈硬化を促進し、糖尿病・高血圧・脂質異常症を発症させ、悪化させてしまう。

内臓脂肪はこうした物質(悪玉アディポサイトカイン)の分泌に繋がり、逆にアディポネクチンといった体をよい方向に向かわせる因子を減らすことがわかっています。

ビジネスパーソンができるだけ長く現役で生き生きと働いていくためにも、内臓脂肪を減らすことが、生活習慣病を防ぎ、将来の血管系病変を予防することにつながるのです」(上芝先生)

内臓脂肪が増える原因とリスクのイメージ図  内臓脂肪を減らすことが、メタボに関連する諸症状改善のポイントとなる。

以上、コロナ禍での生活習慣の急激な変化による健康に対する懸念点を上芝先生に聞いた。そして、ここからは花王がそのような社会課題にどのように向き合ってきたのか。それを掘り下げてみよう。.

花王の研究で分かった、ミトコンドリアに働きかけ、内臓脂肪を効果的に燃やすポリフェノールの効果

見た目にはわかりづらいからこそ、ビジネスパーソンをはじめ多くの人が抱える内臓脂肪の悩み。近年、花王の研究などによって効果があると期待されているのが、茶カテキンやコーヒークロロゲン酸といった「ポリフェノール」だ。

ポリフェノールとは何か、あらためておさらいしておこう。

動物と異なり、自分で動けない植物は、紫外線や乾燥といった厳しい環境から自らを守るために“抗酸化作用などを有するポリフェノール”を作り出す。これは植物にしか作れないもので、その種類は8000以上もあるという。

よく知られているのが、赤ワインに含まれるアントシアニンやレスベラトロール、大豆に含まれるイソフラボンなど。現代の日本人が摂取する2大ポリフェノールは、緑茶とコーヒーから得ているものだ。

緑茶には茶カテキンが、コーヒー豆にはコーヒークロロゲン酸というポリフェノールが含まれている。

花王では、ポリフェノールの研究を1990年代からスタートさせている。その中で見えてきたのが、茶カテキンとコーヒークロロゲン酸に内臓脂肪を低減させる効果があることである。

茶カテキンは茶葉に含まれるポリフェノールだ。古い書物にも、日本茶は五臓の邪気を払うとか、痩せる、油を去らせるなどと書かれていて、昔からなんとなく緑茶は体にいいといわれていた。その茶カテキンがどのように内臓脂肪を低減させるのか。

食事から摂った脂質の代謝にかかわるのは肝臓で、肝臓に脂質が入ると、ミトコンドリアという人体の細胞に含まれる燃焼器官において、β酸化(脂肪酸を酸化してアセチルCoAを生成する細胞内の代謝経路)の関連酵素が脂質をエネルギーに変換する。

だが、必要以上に脂質が入ってくると、すべてを燃焼させることができず、再び脂質の形に変換して脂肪組織に蓄積される。これが内臓脂肪となるわけだ。

だが、茶カテキンを摂取すると、β酸化関連酵素が活性化され、摂取した脂肪を効率よく燃焼させる。その結果、内臓脂肪として蓄積されにくくなる。これが茶カテキンの働きだ。

茶カテキンによる内臓脂肪低減メカニズムのイメージ図  茶カテキンを摂取すると、肝臓のミトコンドリアにおいて、β酸化関連酵素が活性化され、摂取した脂肪が効率よく燃焼。内臓脂肪として蓄積されにくくなる。

コーヒークロロゲン酸は内臓脂肪低減効果だけでなく、血圧低下効果も

茶カテキン同様、ポリフェノール研究の中で着目されているのが、コーヒー豆に含まれる「コーヒークロロゲン酸」だ。

コーヒーの歴史をひもとくと、10世紀にアラビア人医師が生のコーヒー豆を秘薬として扱ったという記録がある。嗜好品として世界に広まる以前、人間は本能的にコーヒーに何らかの効果があることに気づいていたのかもしれない。

花王のポリフェノール研究によると、焙煎前の生のコーヒー豆に豊富に含まれるコーヒークロロゲン酸にも内臓脂肪を低減させる効果があることがわかった。それだけでなく、血圧低下作用も確認されたという。

では、まずはコーヒークロロゲン酸の「内臓脂肪低減」のメカニズムについてひもといていこう。

コーヒークロロゲン酸は肝臓に運ばれた脂質や糖類を燃焼させるミトコンドリアの働きを活発にして、脂質の取り込みをスムーズにする。さらに余分な糖質(グルコースなど)の脂肪への再合成を抑制するという。

つまりコーヒークロロゲン酸は、人が本来もっている脂質代謝能力を高め、内臓脂肪を低減させる働きがあるのだ。

コーヒークロロゲン酸の内臓脂肪低減メカニズムのイメージ図  コーヒークロロゲン酸は肝臓に運ばれた脂質や糖類を燃焼させるミトコンドリアの働きを活発にして、脂質の取り込みを促進する。

さらにもうひとつの機能である「血圧を正常にする働き」についてだが、コーヒークロロゲン酸は体の中でフェルラ酸という物質に代謝され、全身の血管をめぐるなかで、活性酸素を抑制して血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の働きを向上させることもわかってきた。

血管が拡張され柔軟性が保たれることで、血流がスムーズになり、血圧を下げる効果が期待できるというわけだ。

無理せず内臓脂肪を減らしていく3つのステップ

これら茶カテキンやコーヒークロロゲン酸を取り入れながら、ミトコンドリアの中で働く酵素の活性を高め、脂肪を燃やせば、効率よく内臓脂肪を減らしていけるだろう。

しかしながら、人それぞれ体質も違い、ライフスタイルも違う。そのなかで、多くの人に同じような効果をもたらすにはどうしたらよいのか。

そこで多くの人が効果的に内臓脂肪を減らしていくためのステップを3つに分類した。

STEP1 自分の“見えない”内臓脂肪を意識しよう

内臓脂肪を減らすには適度な運動や食事の見直し、生活リズムの改善などが必要だが、仕事を精力的にこなすことに注力しているビジネスパーソンは、そのための一歩をなかなか踏み出しにくい。

実際に、男性は20代から30代にかけての働き盛りから肥満の割合が急増。しかも、その9割が内臓脂肪型肥満だという。

皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満の男女別の年代割合を示したグラフ (平成30年国民健康・栄養調査より)  男性は20代から30代頃にかけて肥満の割合が増え、その9割が内臓脂肪型肥満

今たとえ肥満が気にならなくても、生活環境の変化によって内臓脂肪が知らず知らずのうちに蓄積されていくことになるかもしれない。

こうした内臓脂肪のケアは、激動の時代においては個人の力ではどうにもならない社会問題の一つといえよう。現役時代が長い若手ビジネスパーソンこそ、将来の健康リスクに備え、早めに内臓脂肪対策をしていくことが重要だ。

最初のステップは、医療機関などに行くなどして、現状を計測したり、ヘルステック系の企業が開発を始めているウェアラブルデバイスなどを活用し、“自らの健康状態を意識した生活を心がける”ことだ。

  • (写真:tepkulmanont/i-stock)

STEP2 成功のカギは、「茶カテキンやコーヒークロロゲン酸の摂取」の習慣化

自分の内臓脂肪レベルを知ることは、「手を打っていかなければ」という動機づけになるものだ。

内臓脂肪を減らしていくには食生活の改善が重要だが、それを助けるためにも茶カテキンやコーヒークロロゲン酸の継続摂取がカギとなる。

生活習慣研究を得意としてきた花王の研究によると、例えば、茶カテキンでは、ヒトを対象にした試験では、8週間継続して摂取することで、脂肪を代謝する身体に変化し、12週間継続して摂取することで内臓脂肪面積、皮下脂肪面積とも低下。

体重が下がるという結果を得てきた。

茶カテキンやコーヒークロロゲン酸はいかに継続して摂取するか、生活に組み込んで習慣化するかが大切だ。食事のときや仕事の合間、リフレッシュタイムなど、細かいルールはないので日々の生活の中に取り入れてみよう。

茶カテキンの脂肪の代謝向上効果 被験者:健常男性14名 ·カテキン570mg/日を、8週間継続摂取(対照群は0mg/日) ·8週間摂取後に呼気分析 対照群と比べ、安静時の脂肪代謝量が有意に増加

コーヒークロロゲン酸の脂肪の代謝向上効果 被験者:健常男性7名 ·クロロゲン酸359mg/日を、(対照群は0mg/日)1週間継続飲用後、食後3.5時間の呼気分析 対照群と比べ、総脂肪消費量が有意に向上

茶カテキンの内臓脂肪面積低減効果 被験者:BMI24以上30未満の健常男女240名 ·カテキン583mg/日を、12週間継続摂取(対照群は96mg/日)  対照群に比べ、摂取前からの変化量が有意に減少

コーヒークロロゲン酸の腹部全脂肪面積低減効果 被験者:軽度肥満の健常男女109名 ·クロロゲン酸297mg/日を、12週間継続摂取(対照群は2mg/日)  対照群に比べ、摂取前からの変化量が有意に減少

  • 出所:花王

STEP3 モチベーションUPアプリの活用でグッド・サイクルを作る

とはいえ、人は変化が見られないと、継続しにくいもの。その継続によって自身の体にどんな変化がもたらされているのか、その効果を目にすることで、おのずと続けるモチベーションが高まるはずだ。

日本では2011年から始動している「スマート・ライフ・プロジェクト」の取り組みなどによって、スマホやアプリなどを活用したヘルステックサービスが多々生まれている。

近年でも、さまざまなヘルスチェック機能を持つデジタルガジェットが登場し、自分自身で日々の体調を把握し、微妙な体調の変化を察知できるようになった。

着けているだけで自身の体調を管理できるというスマートウォッチやオーラリングが注目を集めているが、こうしたデジタルガジェットのおかげで自身のデータを蓄積し、分析することで健康意識を高めていくことができる。

  • (写真:Edwin Tan/i-stock)

花王でも、これまで蓄積してきた約2万人の内臓脂肪と体格に関するデータを活用し、その人の内臓脂肪レベルが推定されるようなサービスの検討を進めている。今後の進化に期待したい。

また、茶カテキンやコーヒークロロゲン酸摂取を習慣化することで、普通に生活していても内臓脂肪の消費が期待できるが、あわせて運動をすると相乗効果も生まれてくるという。

ぜひウォーキングなど併用しながらこれら3つのステップをくり返し、日常生活での健康意識を高め、グッド・サイクルを作っていこう。

3ステップへの注目は「生活者に寄り添う」思想から生まれた

これまで挙げた3つのステップに注目し、社会全体の健康課題に向き合っている花王。もともと「生活者に寄り添う」という思想があり、人々がどういうライフスタイルを取り入れているかという生活習慣研究も得意としているという。

いろんなものが便利になり、暮らしも豊かになり始めた1990年頃。日本でも肥満をはじめとする生活習慣病が顕在化してきたが、その解決のためのひとつの機能として、ポリフェノールに注目したのだという。

茶カテキン、コーヒークロロゲン酸というふたつのポリフェノールを、どうしたら人々の健康により効果的に生かすことができるか。

次回では、花王の長年の代謝・ポリフェノール研究の歴史と、花王ならではの組織運営、新しいイノベーションの生み出し方について掘り下げていく。

(制作:NewsPicks Brand Design 監修:上芝元(東邦大学医学部教授) 執筆:武田ちよこ 撮影:大橋友樹 デザイン:田中貴美絵 編集:奈良岡崇子 )

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