ジアシルグリセロール油(エコナクッキングオイル)の暴露マージン(MoE)を用いたリスク評価

ジアシルグリセロール油(エコナクッキングオイル)中のグリシドール脂肪酸エステルの暴露マージン(MoE)に関しては、食品安全委員会新開発食品(第62回)・添加物(第75回)合同専門調査会(2009(平成21)年8月24日)の添付資料ファイル:資料4(新開発食品専門調査会専門委員の提出資料)によると、ヒトの体内で100%グリシドールに変わると仮定したワーストケースシナリオで算出し、以下の様に見積られています。
(http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20090824sh1)

  体重50kgのヒトの場合 248
  体重60kgのヒトの場合 296

発がん性混入物の安全性評価における、『健康上の危惧がないと考えられるMoE値は10,000』でありますが、ジアシルグリセロール油(エコナクッキングオイル)のMoE値は10,000に対して約40倍の隔たりがあるため、『健康上の危惧が存在しないとはいえない』と、2009年8月24日の内閣府食品安全委員会 第62回新開発食品・第75回添加物合同専門調査会で意見が出されました。
しかし、IARCのハザード評価ではグリシドールと同じ2A(ヒトに対して恐らく発がん性が有る)と評価されたアクリルアミドに関して、2005年の登田らの報告*1 では、食品中アクリルアミドの平均的摂取量でのMoEは300、摂取量が多い集団のMoEは75であることが報告されています。アクリルアミドはアミノ酸や糖類を含む食品を120℃以上の高温で揚げる、焼く、焙るなどの加熱処理によって生成する化学物質です。アクリルアミドが含まれている食品は市販の加工食品だけではなく、その生成の仕組みに食品の加熱が関係していることから、家庭で食品を調理する場合にも条件がそろえば、アクリルアミドができてしまう可能性があるとしています。例えば、揚げ物、炒め物、焼き物などにもアクリルアミドが含まれていることが確認されています(農林水産省のホームページを参照*2)。日本を含めた各国の対応は、現時点では摂取を禁止する措置ではなく、食品中におけるアクリルアミド含量の調査を行い、食品メーカーに対してアクリルアミドを低減した製造方法を開発するよう促しています。また、BfRの2009年3月10日付け声明にも、幼児用ミルク製品の脂肪についても同様に、ワーストケースシナリオとして乳児の体内で含有するグリシドール脂肪酸エステルがすべてグリシドールに変わったと仮定して、生後間もない乳児の最大負荷はグリシドール暴露量6μg/kg体重で、MoE値にして670という結果になります(暴露査定により130~760の範囲)。この場合も業界に対し低減対策の必要性を提唱するものの、乳幼児にとって唯一の代替食品であるためこれまで通り、摂取を継続するよう推奨しております。
ジアシルグリセロール油(エコナクッキングオイル)は、ワーストケースシナリオでアクリルアミドやドイツにおける乳児用ミルク製品と同程度と考えられます。
ご参考までに、各種発がん物質のMoEを並べた一覧を掲載します。

引用文献

  • * 1 登田美桜ら, Bull.Natl.Inst.Health Sci., 123, 63-67, 2005
  • * 2 http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_kiso/syokuhin.html
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