グリシドール脂肪酸エステルのハザード評価について

グリシドール脂肪酸エステルに関する安全性の情報は、世界保健機構(WHO)の機関の1つである国際がん研究機関(IARC)の評価情報と、その根拠となった学術文献を基に確認いたしました。IARCは、様々な化学物質、天然成分などのヒトへの発がん性について科学論文などの公表された文献情報を基にして、その確からしさを評価し、以下に示すように、グループ1から4に分類しています。この分類は、「発がん性の強さ」を評価しているのではなく、「発がん性の根拠の強さ」を評価しており、ヒトに対する発がん性の「ハザード評価」を行っています。これは、リスクの強さを示すものではありません。

グリシドール脂肪酸エステルは、IARCのハザード評価書では、ヒトにおける発がん性については分類できない(Group3)とされています。
さらにIARC評価の以前、以後に報告されたグリシドール脂肪酸エステルに関する安全性情報を収集したところ9件の文献を確認することができましたが*1~9 、ヒトへの発がん性に関する情報は得られませんでした。

(2010年3月現在)

  • グループ1:
    ヒトの発がんデータの因果関係が明白である物質の分類で、「ヒトに対して発がん性がある(carcinogenic to humans)」と評価されています。(例:ベンゼン、アフラトキシン、太陽光線、コールタール、アスベスト、たばこ、アルコール飲料、カドミウムなど)
  • グループ2A:
    ヒトに対する発がん性は限定的ですが、実験動物で発がん性が確認され、「ヒトに対して恐らく発がん性が有る(probably carcinogenic to humans)」と評価された分類です。(例:アクリルアミド、アドリアマイシン、紫外線A~C、熱いマテ茶、グリシドールなど)
  • グループ2B:
    発がん性が2Aよりさらに弱く、実験動物でも発がん性が限定的な物質で、「ヒトに対して発がん性があるかもしれない(possibly carcinogenic to humans)」と評価された分類です。(例:アセトアルデヒド、コーヒー、わらび、カーボンブラック、四塩化炭素、鉛、ガソリン、ディーゼル燃料など)
  • グループ3:
    ヒトに対する発がん性が証拠として不適格で、実験動物においても発がんの評価不能か、実験動物において発がんの因果関係が確認されてもヒトでの発がんメカニズムが当てはまらない分類で、「ヒトに対する発がん性については分類できない(cannot be classified as to carcinogenicity in humans)」と評価されています。(例:天然のカラギーナン、カフェイン、コレステロール、メラミン、サッカリン、無水コハク酸、茶、グリシドール脂肪酸エステルなど)
  • グループ4:
    ヒトでの発がん性は確認できなかったことから「ヒトに対して恐らく発がん性がない(probably not carcinogenic to humans)」と評価された分類です。(例:カプロラクタム)

引用文献

  • * 1 Hendry J.A. et al., Br.J.Pharmacol.Chemother., 6, 235-255, 1951
  • * 2 Walpole A.L., Annals of the New York Academy of Sciences, 1958
  • * 3 Weil O.S. et al., Am.Ind.Hyg.Assoc.J., 24, 305-325, 1963
  • * 4 Swern D. et al., Cancer Res., 30, 1037-1046, 1970
  • * 5 Van Duuren B.L. et al., Cancer Res., 32, 880-881, 1970
  • * 6 IARC, IARC Monogr.Eval.Carcinog.Risk Chem.Man, 11, 183-186, 1987
  • * 7 IARC, IARC Monogr.Eval.Carcinog.Risk Chem.Man, 11, 187-190, 1987
  • * 8 Canter D.A. et al., Mutation Res., 172, 105-138, 1986
  • * 9 Boogaard P.J. et al., Xenobiotica, 29, 987-1006, 1999
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