食品中およびジアシルグリセロール油(エコナクッキングオイル)中におけるグリシドール脂肪酸エステルの存在について

花王では、グリシドール脂肪酸エステルの量を間接的に測定できるMCPD-FS法(ドイツ公定法:DGF標準法C-III 18(09))を用いて分析し、2009年6月に厚生労働省に報告しました。その結果、エコナクッキングオイル中に91ppm存在し、また市販の一般精製油脂を測定したところ0.5~9.1ppmの範囲で含まれることがわかりました。
食品中のグリシドール脂肪酸エステルを直接分析する公定法は報告されていません。これまでグリシドール脂肪酸エステルを直接測定する方法がないため、分析方法の開発が期待されていましたが、花王は、このたび食用油中のグリシドール脂肪酸エステルを直接分析する方法を新たに開発しました*1
(ppmとは100万分の1、1ppm=0.0001%)

これをもとに、国立医薬品食品衛生研究所で分析され、2010年5月に厚生労働省からジアシルグリセロール油および食用油中のグリシドール脂肪酸エステルの含有量が公表されました。

LC/MS法(直接測定法)
厚生労働省公表(2010年5月)
ドイツ公定法:MCPD-FS法
(間接測定法)換算値
MCPD-FS法
花王分析値(2009年7月)
ジアシルグリセロール油 166~286ppm 55~94ppm 91ppm
一般食用油 未検出~16ppm 0~5.3ppm 0.5~9.1ppm

今回公表された分析値は、グリシドール脂肪酸エステルを直接測定し、グリシドール脂肪酸エステルそのものの濃度を示しております。
ジアシルグリセロール油(「DAGを主成分とする油」と表記されています)からは、166~286ppm検出されたと公表され、この量を昨年報告したMCPD-FS法での分析値に換算すると、55~94ppmとなります。また、食用油は、未検出~16ppmと公表されましたが、この量をMCPD-FS法での分析値に換算すると0~5.3ppmとなります。


LC/MS法(直接測定法)の分析値から、MCPD-FS法(間接法)分析値への換算は、以下のように行います。

MCPD-FS法(間接法)換算値=(LC/MS法分析値(ppm)/グリシドール脂肪酸エステルの分子量)×MCPDの分子量


今回の分析では、グリシドールパルミチン酸エステル、グリシドールオレイン酸エステル、グリシドールリノール酸エステルの3種類を分析しております。これらグリシドール脂肪酸エステルの分子量は異なりますので、それぞれのグリシドール脂肪酸エステルに対応するMCPD-FS法(間接法)換算値を算出し、その合計量が油中のMCPD-FS法(間接法)換算値となります。

引用文献

  • * 1 Masukawa Y. et al., J.Oleo Sci., 59, 81-88, 2010
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