新型コロナウイルスの環境除染方法

接触感染経路のリスク削減対策

手洗いだけでは接触感染の対策として限界があります。
感染源となる環境表面のウイルス除染により、
接触感染リスクの低減が期待できます。

ウイルス除染

接触感染経路のリスク削減対策としては、①手指に付着したウイルスをハンドソープで洗い落とす②手指に付着したウイルスをアルコール・サニタイザーなどで消毒する③手指、口などでウイルス付着物に触る頻度を下げる④ワイプ、水洗などの掃除手法により付着ウイルスを取り去り環境表面のウイルス濃度を下げる⑤ウイルス不活性効果のある製品を用いて表面上のウイルスを積極的に不活性化する、最後に、⑥汚染された手指で口、鼻、目を触らない、といった方法が知られています。接触感染経路上の付着ウイルスを取り去ることとウイルスを不活性化することを合わせて“ウイルス除染”と呼びます(日本リスク学会, 2020; CDC, 2020)。

誰しも実践できる主要ファクター

ここに挙げた接触感染経路のリスク削減方法は、いずれも「手を洗う」「不用意に触らない」「掃除する」「抗ウイルス製品で除染する」といった具体的でわかりやすい行動で実現できます。環境表面のウイルス除去では、ふき取りなどでウイルスを取り除く方法、および消毒剤などでウイルスを不活性化する方法が併用されることが多く、誰しもが実践できることから、接触感染経路のリスクマネジメントの主要ファクターとなり得ます。しかし、日本社会では手を洗う以外の接触感染対策は、現時点ではまだ情報が不足しています(厚生労働省,国民の皆さまへ(新型コロナウイルス感染症), 2020)。

清掃行動におけるウイルス拡散の回避

新型コロナウイルスの接触感染リスク対策の構築には、病原性微生物制御に関する膨大な先行知見が参考となります。特に、重要な指摘としては、「殺菌効果のない製品や器具で清掃行動を行った場合、その行為は微生物汚染域の拡大につながる」ということです(CDC, 2008)。この指摘はウイルス除染に対しても同じだと考える必要があります。つまり、ウイルス除染においても不活性化効果のない溶液、器具を用いて清掃行動を行った場合、ウイルスを意図せず拡散させてしまうのです。これを回避するためには用いる溶液や器具を1回使い捨てにするか、溶液、器具にウイルス除染効果を付与することが必要不可欠となります。

fig. 飛沫由来のコロナウイルスの付着

接触感染経路を示す、飛沫由来のコロナウイルスの付着の図。感染者の飛沫が、各種表面に付着し、それを非感染者が手で触り、口や鼻、目に触れることで、接触感染となる。非感染者の手に付着したウイルスを手洗いする場合、手洗いだけで接触感染を制御するには限界がある。そのため、非感染者も含めて繰り返し触るような各種表面に付着するウイルスを除染することで、感染経路の制御ができることを図示。

Reference

  • 横畑綾治,石田悠記,西尾正也,山本哲司,森卓也,鈴木不律,蓮見基充,岡野哲也,森本拓也,藤井健吉(2020)接触感染経路のリスク制御に向けた新型ウイルス除染機序の科学的基盤~コロナウイルス,インフルエンザウイルスを不活性化する化学物質群のシステマティックレビュー~ ,リスク学研究 30(1): 1–24
  • 日本リスク学会理事会コロナウイルス対策検討チーム (2020) 環境表面のウイルス除染ガイダンス第4版, http://www.sra-japan.jp/2019-ncov/(アクセス日:2020年4月15日)
  • CDC (2020) Interim Recommendations for U. S. Community Facilities with Suspected/Confirmed Coronavirus Disease 2019 (COVID-19), https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/community/organizations/cleaning-disinfection.html(アクセス日:2020年5月12日)
  • 厚生労働省,国民の皆さまへ(新型コロナウイルス感染症)(2020)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00094.htm(アクセス日:2020年5月28日)
  • CDC (2008) Guideline for Disinfection and Sterilization in Healthcare Facilities
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