論文発表

Mosquito repellence induced by tarsal contact with hydrophobic liquids

疎水性液体と脚の接触による蚊の忌避

論文タイトル:疎水性液体と脚の接触による蚊の忌避

論文:飯倉ら、2020
Sci. Rep. 10, 14480 (2020)

要旨

蚊の脚は、独特の撥水性の高い表面構造を有しています。蚊の脚の撥水性は一方では、油などの疎水性物質の濡れ性を高めます。この高い濡れ性によって蚊は、油から脚を通じて強い引力を受けます(蚊の自重の最大87%に相当)。油でコーティングされた表面での蚊の降着行動を調べたところ、親水性液体でコーティングされた表面に比べて、油でコーティングされた表面では、蚊の降着している時間が短縮されることが観察され、疎水性物質による被覆が忌避反応を誘発することが示唆されました。観察された蚊の忌避挙動は、化粧品用途としても幅広く利用されているシリコーンオイルなど、複数の疎水性液体に共通して見られました。これらの忌避効果は複数の疎水性物質に共通していることから、化学的相互作用によるものではなく、疎水性液体の物理的特性によるものと考えられます。この接触時間は、ヒトの皮膚上で蚊の吸血が開始されるのを防ぐのに十分短い時間といえます。カバの分泌液も低粘度シリコーンオイルと同様の物理的性質を持ち、蚊の忌避反応を引き起こし、天然の忌避剤として作用することが示唆されました。これらの結果は、新しい発見であり、安全で効果的な蚊の忌避技術を開発するのにつながると考えられます。

目次

イントロダクション
結果
種々な液体と蚊の脚の接触角
引き込む力の測定
疎水性液体上での、蚊の降着行動
接触時間に及ぼすポリジメチルシロキサン(PDMS)粘度と塗布比の影響
毛細管力に対するPDMS粘度の影響
実際の人間の皮膚に対する蚊の降着行動
ディスカッション
実験方法/データ引用/参考文献

詳細

  • 題名(英文):Mosquito repellence induced by tarsal contact with hydrophobic liquids
  • 著者:Hiroaki Iikura, Hiroyuki Takizawa, Satoshi Ozawa, Takao Nakagawa, Yoshiaki Matsui & Hiromi Nambu
    (KAO Corporation, Material Science Research, and Personal Health Care Products Research)
  • 掲載:scientific reports
  • 受付日:7 April 2020
  • 受理日:14 August 2020
  • 公開日:2 September 2020
  • DOI:Sci. Rep. 10, 14480 (2020)
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