発表資料: 2022年01月06日

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歯みがき時に飛び散り落下する飛沫の様子を定量的に解析
飛沫を抑制する歯みがき動作を調査

花王株式会社(社長・長谷部佳宏)パーソナルヘルスケア研究所は、歯みがき時に口から飛び散り落下する飛沫の様子と歯みがき行動の関係について調査を行ないました。その結果、歯みがき動作の違いにより、飛沫の量や飛距離に差があることが判明。飛沫を抑制するには口を閉じてみがくこと、歯磨剤を使用すること、歯を1本ずつみがくように歯ブラシを小さく動かすことが有効であることを明らかにしました。
今回の研究成果は、関東甲信越歯科医療管理学会 第27回学術大会(2021年11月3~27日、Web開催)にて発表しました。

歯みがき動作の違いによる飛沫の様子

背景

インフルエンザや新型コロナなどの感染症は、感染者の口や鼻から飛散したウイルスを含む飛沫を体内に取り込んでしまうことが感染要因の1つです。歯みがきは、口腔内を清潔に保つために重要ですが、昨今、歯みがき時に発生する落下性飛沫(以下、飛沫)について、感染のリスクを高める可能性が指摘されています。しかし、歯みがき時の飛沫と歯みがき行動について定量的に解析した例はありません。花王は、歯みがき時に飛び散り落下する飛沫の様子(飛沫動態)とそれに影響する歯みがき動作の関係を明らかにし、どのようなみがき方をすれば飛沫量を抑制できるのかを調査しました。

方法と結果

1.飛沫動態の解析(ヒト試験)

成人男女20名に普段と同じように歯みがきをしてもらい、その様子を微粒子可視化装置で撮影し(図1)、得られた画像から飛沫の量と飛距離の解析を行ないました*1

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図1. 微粒子可視化装置での試験の様子
(新日本空調株式会社 可視化専用クリーンルームにて)

その結果、全ての被験者に共通して、足元から半径50cm以内の左右に45°(計90°)のエリアに飛沫が最も多く飛散しました。また、最大で足元から179cm離れたところにまで飛沫が達した被験者もいました。
次に、飛沫の多い人と少ない人の歯みがき動作に着目しました。すると、みがく際に口を開けている時間が短い人、歯ブラシを動かす幅(ストローク幅)が小さい人で、飛沫量は顕著に少ないことが確認できました(図2)。このことから、開口程度とストローク幅といったみがき方の個人差が飛沫動態に影響を与えることがわかりました。さらに、飛沫量が多い歯みがき動作を行なう人でも歯磨剤(ペーストタイプ)を使用することで飛沫量が少なくなりました。

  • * 1 同一の歯ブラシを使用してブラッシング。撮影した動画から静止画を作成し、画像解析ソフトを用いて飛沫量と飛距離を算出。

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図2. 飛沫の飛散の様子

2.飛沫量の定量解析(モデル試験)

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図3. ブラッシングマシーンを用いた試験の様子

歯ブラシの動かし方と飛沫量の変化を定量的に計測するため、歯ブラシの動きを制御できる機械を用いて試験を行ないました。試験では、ステンレス製の半円柱で作成した疑似歯モデル上で、歯ブラシのストローク幅、速さ、荷重、歯磨剤有無の条件を変えてブラッシングをしました(図3)*2
その結果、ストロークの速さと荷重は飛沫量に影響を及ぼしませんでした。

一方、ストローク幅を30mmから15mmと短くすると飛沫量は顕著に減少(図4)。さらに、ストローク幅30mmの場合でも、歯磨剤を使用することによって飛沫量が顕著に減少しました(図5)。歯みがき時の飛沫は、歯と歯の凹凸を往復する際に、歯ブラシの毛先が唾液などとともに跳ね上がることによって発生すると考えられます。そのため、ストローク幅を小さくすることで毛先が跳ね上がる前に次の往復運動が起こり、毛先の跳ね上がりが起こりにくくなって飛沫量が抑えられたと推察しています。また、歯磨剤を使用した場合は、口中で歯磨剤が泡立つことによって唾液などの液粘度が増加し、飛沫が飛びにくくなったと考えられます。

  • * 2 ストローク幅 30mmまたは15mm、ストローク速さ 180mm/sまたは120mm/s、ブラッシング荷重 300gfまたは150gf

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まとめ

通常の歯みがきをした場合、飛沫は足元から正面方向の半径50cm以内に特に多く飛散していました。また、飛沫を抑制するには、歯みがき時に口を閉じること、歯ブラシを動かす幅を小さくすること、歯磨剤を使用することが有効であることがわかりました。
今回の調査結果をもとに、飛沫を抑制するには以下の点に留意することが大切です。
・歯磨剤を適量使う
・口を閉じてみがく
・歯ブラシを小刻みに動かし、歯を1本ずつみがくようにする
・複数人で歯みがきをする場合は、2m程度間隔をあける
・歯みがき後は、周囲を衛生的に保つために消毒剤などを用いて清拭する

今後、本知見を活かしてより効果的かつ衛生的な歯みがき所作の提案につなげていきます。

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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