発表資料: 2018年07月10日

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新開発の肌の3Dシミュレーション解析技術により、
角層柔軟性が加齢した肌の「見た目のハリ感」印象の鍵を握ることを確認

花王株式会社(社長・澤田道隆)は、肌の見た目の変化をシミュレーションで予想する、3D座屈*1 解析技術を新開発しました。本解析の結果、加齢による肌の「見た目のハリ感」低下には、真皮の弾性に加え角層の柔軟性が大きく影響することが明らかになりました。本知見に基づき、真皮に加え角層へのアプローチにより、肌の「見た目のハリ感」を向上する技術の開発へ向け、検討を進めてまいります。
なお、本研究内容は、日本機械学会2018年度年次大会(2018年9月9~12日、大阪府)にて発表予定です。

  • * 1 座屈 : ある一定以上の変形に達すると急に大きなたわみが生じる現象。

【座屈解析による肌の3Dシミュレーション解析技術の構築】
肌の表面は、角層、表皮、真皮に分かれており、組成や構造、物性が大きく異なります。各々肌の見た目に大きく影響すると考えられていますが、その寄与度はよくわかっていませんでした。先行研究では、肌断面に対して2Dの座屈モデルを用いたシミュレーションにより、各々の寄与度を見積もる検討が行なわれてきましたが、肌の見た目を予測しようとすると、肌表面形状を反映する3Dモデルを用いる必要がありました。しかしながら、肌にかかる複雑な力の計算が困難なため、3Dシミュレーション化できていませんでした。
今回、シミュレーション解析と肌実態との関連性を検討した結果、複数方向の力を加味することにより、角層、表皮、真皮の3層で構成される3Dシミュレーション技術の開発に成功しました(図1)。
各々の層の厚みや弾性率の情報は、各々の層の厚みを測定するOCT(Optical Coherence Tomography)や肌の弾性率を測定するCutometerなどの測定機器を利用して入手しました。解析の手順としては、まず2Dモデルで座屈解析を行ない、得られた固有値を用いて定義した座屈ひずみ(式1)によって周期長さを求めます。次に、その周期長さをモデル幅とする3Dモデルで座屈解析を行ない、得られた複数の座屈モードを重ね合わせて、肌の見た目を予測します。

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図1 肌の3Dモデル

力学特性を変えて若年肌と加齢肌の解析を行なった結果、従来の肌実態解析からいわれているように、真皮の弾性が低下した加齢肌は、若年肌に対して「見た目のハリ感」が大きく低下しています(図2)。図2の本モデルで推定した加齢肌モデルは、これまでの研究で明らかにしてきた弾力線維エラスチンがダメージを受けた肌の外観とも類似しており、実態をよく表していることがわかりました。

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若年肌モデル(真皮弾性高)

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加齢肌モデル(真皮弾性低)

図2 肌の「見た目のハリ感」低下(乾燥環境下)

【肌の見た目に対する角層の寄与】
本モデルを用いて、環境変化が肌の見た目に及ぼす影響を種々検討しました。その結果、若年肌は環境が変化しても「見た目のハリ感」があまり変わらないのに対して、加齢肌は乾燥状態から湿潤状態になると「見た目のハリ感」が大きく向上する(図2と図3の比較)ことがわかりました。

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若年肌モデル(真皮弾性高)
湿潤環境下(角層柔軟性高)

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加齢肌モデル(真皮弾性低)
湿潤環境下(角層柔軟性高)

図3 肌の「見た目のハリ感」向上(湿潤環境下)

今回の解析結果により、真皮の弾力性が低下した加齢肌において、「見た目のハリ感」を向上するために角層の湿潤化が重要であることが明らかになりました。このように、肌の3Dシミュレーション解析により、肌状態の視覚的変化を予測できるようになりました。今後、「見た目のハリ感」向上をはじめとした、加齢肌の研究に応用していく予定です。

お問い合わせ

花王株式会社 広報部

03-3660-7041~7042

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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