発表資料: 2016年08月30日

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加齢にともなう歯ぐき状態の変化を解明

-加齢にともない歯ぐき組織の血流量を維持する能力が低下することを検証-

花王株式会社(社長・澤田道隆)のパーソナルヘルスケア研究所では、口内環境の健常化をめざしたオーラルヘルスケア研究の一環として、加齢にともなう歯ぐき状態の変化に着目した実態調査および原因解析の研究を行なっています。

今般、これまで行なってきた実態調査および原因解析研究から、
1.加齢とともにヒトの歯ぐきの見た目が青白っぽく、くすむこと
2.その原因の1つが、加齢にともない歯ぐきへの血液供給能が低くなること(微小循環機能の低下)
をはじめて検証しました。

花王では、今回の研究知見を活かして、加齢にともなう歯ぐき状態の変化に着目した研究をさらにすすめていきます。なお、本研究の一部は、第58回歯科基礎医学会(2016年8月24~26日、札幌)にて発表しています。

研究成果

【研究結果-1】

1)加齢にともなう歯ぐき悩みの口腔実態調査
20歳代から60歳代の女性3,508名を対象に実施した口腔実態調査(2013年、花王調べ)を行なった結果、歯ぐきの不調(ハレ、出血、歯ぐきヤセなど)に関わる悩みをひとつ以上持つ人は、全平均で約52%でした。さらに、この結果は年齢とともに増加傾向にあることがわかりました(20歳代:40%、60歳代:62%)。中でも歯ぐきの見た目の色が悪いと感じる人は、20歳代では14%、50歳代では26%と年齢とともに大きく増加していました。
また、同じ人を約10年間追跡調査(20歳代から60歳代の男性49名、女性16名、計65名)した結果、明らかな炎症を持たない歯ぐきにおいても、加齢とともに歯ぐきの色が青白っぽく、くすんで見えることが観察されました(2003年~2012年、花王調べ)。

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2)加齢にともなう歯ぐきの色調の変化
歯ぐきに明らかな炎症を持たない20歳代から50歳代(男性、各年代25名ずつ、計100名)の歯ぐきを撮影し、その色調を測定した結果、年齢に比例して赤みを示すa* 値が低下することがわかりました(図1)。

以上のことから、加齢とともに歯ぐきの色が青白っぽく、くすんで見える原因として、歯ぐきの色調測定における赤みの低下が検証できました。

【研究結果-2】

3)歯ぐき専用の血流動態測定装置の開発
これまでの一般的な歯ぐきの血流を測定する装置では、広範囲の血流量を二次元画像として瞬時に測定することが困難であり、歯ぐきの血流動態の個人差や部位差を精度よく解析することができませんでした。
今回、眼底血流の測定で活用されていたレーザースペックル法による血流画像化技術をもとに、以下の改良(1)~(3)を行ない、歯ぐきの血流動態の測定の再現性および精度を向上させ、歯ぐき専用の血流動態測定装置を開発しました。
(1)広角・狭角のいずれでも歯ぐき血流を測定可能とし、二次元画像データの再現性を向上。
(2)偏光フィルターの導入で歯ぐき内部の血流データのみを抽出可能とし、測定精度を向上。
(3)実際の歯ぐき画像と重ねることで、歯ぐきのどこの部位を観ているか視認性の向上により、歯ぐき各部位の血流動態を正確に測ることが可能。

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4)加齢にともなう歯ぐき血流量の減少
開発した歯ぐき用の血流動態測定装置を用いて、20歳代から60歳代(男性, 各年代約25名ずつ、計126名)を対象に安静時の上顎前歯部の歯ぐき血流量(MBR : Mean Blur Rate)を計測しました。
その結果、個々人の平均血圧(MBP : Mean Blood Pressure)で補正した歯ぐき血流量(MBR/MBP)は加齢にともない、有意に減少していることが明らかになりました(図2)。

5)加齢にともない歯ぐきの血管は血液が流入しにくく、流出しやすい状態に変化
歯ぐき用の血流動態測定装置から得られた126名分のデータより、20歳代から60歳代の歯ぐきの平均血流波形を解析しました(図3)。
その結果、加齢にともなって以下の4つの現象が変化していることが明らかとなりました。これらの現象の変化は、血液が歯ぐき内へ流入することが阻害され、流入量がピークに達した後は逆に歯ぐきから急激に血液が失われることを示しています。

(1)血流上昇の瞬発力が弱くなる→歯ぐきに血液が流入しにくい
(2)血流量のピーク位置が右にずれる→歯ぐきに血液が流入しにくい。
(3)血流ピークからの下降速度が速くなる→歯ぐきから血液が流出しやすい。
(4)血流の持続性が低くなる→歯ぐきに留まる血液量が少ない。

以上のことから、高齢者は若年者に比べ、歯ぐき血管は血液が流入しにくく、流出しやすい状態にある(高齢者は常に歯ぐきへの血液供給能が低い状態にある)と考えられます。

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研究背景

健やかで豊かな生活をおくるためには、口から噛んで食べること(口腔機能)がとても大切です。特に、超高齢社会となった日本においては、加齢にともなって増加する歯周病の発生メカニズムの解明や歯ぐきの健康維持・管理に関する研究は、ますます重要になってきます。
花王では、「健康は、口の中全体の状態(口内環境)から」の考えのもと、口内環境の健常化をめざしたオーラルヘルスケア研究を進めています。その一環として、「加齢にともなう歯ぐき状態の変化」に着目して、本質を解明する研究に注力して研究知見を積み重ねています。



※本資料は、重工記者クラブに配信しています。

お問い合わせ

花王株式会社 広報部

03-3660-7041~7042

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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