参考資料: 2015年03月27日

<お知らせ>
皮膚洗浄料のキメ細かい泡に、新しい2つの機能を発見

花王株式会社(社長・澤田道隆)のスキンビューティ研究所は、このたび、皮膚洗浄料を使用するときの「泡」について、キメ細かい泡が次の2つの新しい洗浄機能をもつことを見出しました。

1)キメ細かい泡ほど、洗浄成分が肌に残らず、肌にやさしく洗える
2)キメ細かい泡は、洗浄力を保ちながら泡が壊れることなく油脂(汚れ)を取り込む

今回の泡の研究から、皮膚洗浄料(石鹸水溶液)をしっかりと泡立てたときのキメ細かい泡は、洗浄成分が泡の表面(空気と水の界面)に吸着する量が大幅に増大するため、それに伴い泡と泡とのすき間の液中の洗浄成分が減少し、相対的に肌へ作用する洗浄成分の量が少なくなり、肌にやさしい洗浄につながることがわかりました。さらに、キメ細かい泡は、皮脂汚れの主成分である液体油を泡膜中に積極的に取り込むことができることもわかりました。
これまでの皮膚洗浄料の設計においては、洗浄成分の選択や液性の最適化、或いは溶液構造の形成などによって、肌へのマイルド性と洗浄性の両立を検討してきました。しかし、今回の知見から得られた、泡による洗浄という新しい機能要素を組み合わせることで、今後、「さらに肌にやさしく、しっかり洗える」皮膚洗浄料への応用につながるものと期待されます。

本研究は、公益社団法人日本化学会の平成26年度第20回技術進歩賞(題名「皮膚洗浄における泡の機能に関する研究」)を受賞しました(表彰式は平成27年3月28日(土)第95回日本化学会年会において開催)。

研究の背景

従来、皮膚洗浄料の評価は、一般的に洗浄成分である界面活性剤を水溶液にした状態で行なわれてきました。
皮膚洗浄料には、基本性能として、肌へのやさしさとしっかりとした汚れ落ち性が求められます。肌へのやさしさは、洗浄成分の肌への収着量(肌表面への吸着量と肌内部への浸透量の和)と関係があり、収着量が小さいほど肌にやさしいと考えられています。また汚れ落ちについては洗浄液中への汚れの溶解量や肌の汚れ残留量が調べられてきました。
しかし洗浄料の実使用場面を考えると、泡立てた状態での観察が必要と考えられます。そこで本研究では、皮膚洗浄料の泡立てた状態における、肌と汚れに対する作用を調べました。

研究の詳細

1)泡で洗浄するときの肌への洗浄成分の残留について

洗浄成分である石鹸(脂肪酸カリウム)水溶液の泡立て時間を変えて、キメ細かさ(泡の粒径)の異なる泡で肌を一定時間洗浄し、肌への脂肪酸カリウムの収着量を定量しました。その結果、泡がキメ細かいほど肌への収着量が有意に少なくなることが確認できました(添付資料図1)。さらに、泡が壊れて流れ出てくる液(排液)に含まれる脂肪酸カリウムの濃度を測定したところ、キメ細かい泡の場合は排液中の脂肪酸カリウム濃度が少なく、そのため皮膚への収着が少ないことがわかりました。すなわち、肌に収着する洗浄成分は、泡が壊れて流れ出る排液や、泡と泡とのすき間に閉じ込められた液中に存在する洗浄成分に由来すると考えられ、粗い泡と比較して、キメ細かい泡ではより多くの洗浄成分が空気と水の界面に吸着しているため、肌に作用する洗浄成分の量が少なくなると考えられました。
このことから、キメ細かい泡を用いた皮膚洗浄は肌によりやさしくなる、ということを見いだしました(添付資料図2)。

2)泡への油脂(汚れ)の取り込み(洗浄力)について

汚れのモデルとして液体油と接触した瞬間の泡と液体油の挙動を観測しました。
脂肪酸カリウム水溶液で作ったキメ細かい泡に、いろいろな種類の液体油を接触させると、まるで毛細管現象がはたらいているかのように、液体油が泡膜中に自然に吸い込まれていくという新たな現象が観測されました(添付資料図3)。これまでは、泡に油が接触すると泡はすぐ壊れてしまうと考えられていましたが、今回の観察では、泡はその形状を維持したまま壊れませんでした。この現象を理解するために詳細な解析を行なったところ、油と水の界面、および空気と水の界面にそれぞれ吸着した脂肪酸カリウムの親水基の電化による反発が、油と水が接触するのを阻み、泡を支えている空気と水の界面を壊さないことによるものと考えられました(添付資料図4)。脂肪酸カリウム水溶液は、界面で規則正しく密に配列するため、油と水の接触を阻む効果が、特に高いと考えられます。
さらに、油の泡膜への侵入距離は、液体油の動的油水界面張力* と高い相関があることがわかりました。油が泡膜に接触した瞬間に、界面張力が瞬時に低減することが油の泡膜への侵入の駆動力になっていると推測されました。
これらの理由により、油との接触によっても泡が破泡せず、油が泡膜中に入り込んでいくという、洗浄メカニズムが達成されていると考えられました。

* 動的油水界面張力;油水界面ができた直後から非常に短い時間内の界面張力

<実験方法>

皮膚洗浄成分である脂肪酸カリウム水溶液をペンシルミキサーにて、5秒、15秒、120秒、の3通りの時間で泡立て、キメ細かさの異なる3種類の泡を作成した。

1)それぞれの泡をヒトの前腕部に乗せ、1分間洗浄後、泡を取り除き、一定時間すすぎ乾燥後、粘着テープで皮膚角質層を剥離し、収着した脂肪酸カリウムの量を質量分析液体クロマトグラフィーにて定量した。

2)120秒間泡立て、平均の泡粒径が300㎛の比較的均一な泡を調整し、得られた泡をスライドグラス上に一定の大きさにとり、スペーサーを乗せ、上からスライドグラスをかぶせた状態をつくり、そこに、色素で着色した油を静かに注入し、油と泡の接触する様子をデジタルマイクロスコープ(倍率:200倍)で観察した。

添付資料




添付資料の参考情報
・Journal of Surfactant and Detergent 2014, 17(1). P.59-65
・Journal of Physical Chemistry B 2014, 118(31), P.9438-9444