発表資料: 2011年12月09日

女性の化粧肌を解析する光学測定装置を新たに開発

~素肌のような自然な仕上がりになるファンデーションの開発に応用~
■可視光を使い、肌表面の凹凸形状と内部からの光の反射を同時に測定できる装置を開発
■肌内部への青・緑・赤色の光の透過状態を解析


花王株式会社(社長・尾崎元規)ビューティケア研究センターは、東京農工大学工学研究院生物システム応用科学府の岩井俊昭教授と共に、可視光を使い、非破壊で肌表面の凹凸形状と表面および内部からの光の反射をイメージング(映像化)する装置(RGB-Optical Coherence Tomography:以後RGB-OCT)を開発しました。さらにこの方法を化粧肌の光学特性解析に応用し、化粧肌が素肌のような自然な仕上がりに見える研究を行ないました。

これまで、化粧のりの状態を調べる方法として、肌の表面のファンデーションの分布を表面から定性的に観察するのが一般的で、ファンデーションの厚みが肌のどのような部分でどの程度ついているかなど付着状態を肌の断面方向から正確に観察する方法はありませんでした。また、ファンデーションを開発するうえで、化粧肌の仕上がりを決める要素の一つである肌の深さ方向での光の情報が重要です。しかし、従来技術では光を青・緑・赤色に分けて、肌内部にどの程度透過しているかなどを調べることが困難でした。

本解析技術により肌表面のキメや毛穴などの凹凸形状に対し、ファンデーション粉体がどのような厚さで付着しているかを初めて測定できるようになり、化粧のりとファンデーション粉体の付着状態の関係が明らかになりました(資料1の左の図)。また、50代以上の化粧した肌を色ムラが少なく自然な仕上がりに見せるべく、肌に入る青から緑の光を抑制し、赤い光を効果的に透過させる光学特性をもった粉体の開発を行ないました。この粉体を含むファンデーションを塗布し、本装置により肌内部への青・緑・赤色の光の反射を測定しました。その結果、開発した粉体は、肌内部に赤い光をより多く透過させる効果があり、化粧肌が素肌のような自然な仕上がりに見えることが検証できました(資料1の右の図)。

本成果は、新しいベースメイク技術の開発に応用しています。また、本研究成果は、Optics & Photonics Japan 2011:日本光学会(2011年11月28日~30日、大阪大学吹田キャンパス)で発表しました。

研究背景

花王では、エイジングに伴う肌の悩みをカバーして、若く、美しく、健康的に見える化粧仕上がりの実現をめざし、化粧肌の光学特性解析技術の開発と化粧品技術の開発を進めています。

これまで、30代に関しては、化粧肌の悩みに、日ごとの化粧のりの悪さがあり、素肌の表面の落屑の日間変動が、その一つの原因であることを報告しました(2011年6月化粧品技術者会SCCJ研究討論会)。それに対し50代以上の肌は、若年層に比べ素肌表面のキメが粗く、表面の凹凸が大きいことが知られており、ファンデーションがこれらの凹凸の影響を受け、化粧のりの悪さを強調していると考えられます。

肌の凹凸が原因である化粧のりの悪さは、ファンデーションの偏在、すなわち、ファンデーションの厚みの分布で表すことができます。そのためには、肌上の化粧塗膜の厚みの分布を計測する必要があります。さらに、設計した粉体が、素肌感の高い自然な仕上がり印象であることを評価するには、可視光での深さ方向の光の広がりをイメージングし、計測する必要がありますが、これまで適切な装置および解析技術がありませんでした。

花王は、肌の表面の凹凸や表面と内部から光の反射の測定を一度に実現するために、Optical Coherence Tomography(以後OCTと呼ぶ)という、生体内の構造を深さ方向に非破壊でイメージングする技法に着目し、研究を行なってきました。従来のOCTは、表層からより深い場所の構造情報をイメージングすることを主たる目的としていたため、近赤外域の低コヒーレンス光源が使用されてきました。花王の研究目的に対しては、広い視野を維持しつつ解像度の高い生体内イメージングを得ることと、可視光による化粧肌の見え方と肌の表面および内部における光の伝搬との関係を明らかにすることが必要と考えました。そこで、可視域のLED*1 を低コヒーレンス光源に使用しました。


*1 LEDとは、Light Emitting Diodeの略で、環境にやさしい低電力光源として急速に普及しています。

研究結果

(1)表面の凹凸の違いによるファンデーションの化粧のり観察(資料2)

20代と50代の女性の肌に、それぞれ洗顔後、パウダーファンデーションを同じ施術者により下地を使わずに塗布し、肌へのファンデーションのつき方について観察を試みました。その結果、50代の肌表面は、皮溝や毛穴の凹凸にファンデーションが偏在し、皮丘に付着していない部分も観察され、不均一な分布になっていることがわかりました。


(2)RGB-OCT装置の構築と化粧肌におけるファンデーションの分布(資料3)

20代と50代の肌へのファンデーションのつき方の観察結果を、RGB-OCT装置を用いて検証しました。光源は、中心波長450nm(青)、520nm(緑)、640nm(赤)の3種類のLEDを使用しました。今回、表面凹凸の影響を見るために、20代と50代の肌表面の凹凸を模したウレタン素材で転写した肌のレプリカを作製しました。このレプリカに、同じ圧力で機械的にファンデーションを塗布し、RGB-OCTで測定し断面映像(横方向と深さ方向)を得ました。その結果、50代の肌では、毛穴にファンデーションの粉体が多く偏在し、ファンデーションの厚みのばらつきが大きいことが明らかとなりました。資料2の観察結果と同様の結果を示していることは、ファンデーションの塗布状態を評価する上で、本解析技術が有効であることを示しています。


(3)化粧肌の表面や内部における光の反射のイメージング探索(資料1)

50代以上の女性の肌色は黄色くくすんでしまいがちであるため、化粧した肌を自然な仕上がりに見せるには、適度な赤みを付与する必要があることが知られています。また、シミ・ソバカスなどの色ムラが目立つ現象には、青や緑の光が関与しています。よって、50代以上の化粧した肌を色ムラが少なく自然な仕上がりに見せるには、肌に入る青から緑の光を抑制し、赤い光を効果的に透過させる光学特性をもった粉体の開発が重要となります。開発した粉体を含むファンデーションを肌のレプリカに塗布し、今回開発したRGB-OCTを用いて、肌内部への青・緑・赤色の光の透過状態を解析しました。その結果、資料1で示すように、開発した粉体は、肌内部に赤い光をより多く透過させる効果があり、化粧肌が素肌のような自然な仕上がりに見えることが検証できました。

本研究によって、化粧塗膜の肌への付着状態を明らかにする解析技術を得たことにより、どんな肌にも化粧のりがよく、肌をカバーすることで、自然な仕上がりの実現を追究していきます。

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。