発表資料: 2011年11月01日

衣料用柔軟剤の効果発現メカニズムを解明

■洗たく・乾燥後、木綿の衣類に残る水分子が、接着剤のようにはたらいて、硬くすることを初めて解明
■衣料用柔軟剤はこの接着を妨げることを発見
■衣料用柔軟剤の超コンパクト化の実現に応用

花王株式会社(社長・尾崎元規)ファブリック&ホームケア研究センター・ハウスホールド研究所は、柔軟剤がどのようなメカニズムで洗たく・乾燥後の木綿の衣類やタオルをやわらかくするかを科学的に解明することを目的に研究しました。その結果、動けなくなった水分子(結合水)による単繊維間の接着が大きく関与していることを突き止めました。

今回の研究は、「木綿のタオルを、柔軟剤を使わずに洗たくし、水を絞ったままほぐさないで自然乾燥すると硬くなる」という現象に着目し、「なぜ濡れたまま自然乾燥すると硬くなるのか」という新たな着眼点から研究を開始しました。

その結果、硬くなる原因は、木綿の単繊維間に残る水分子(結合水)が繊維同士を結びつける接着剤のようなはたらきをして、硬い結合(糸や布全体に及ぶ結合水を介した水素結合ネットワーク)を形成するからだということを明らかにしました。また、これは、硬くなった繊維から水分子を取り除くとやわらかくなる現象からも実証されました。衣料用柔軟剤は、この単繊維間の水素結合ネットワークの形成を防ぐことで、木綿などをやわらかくすることがわかりました(資料1)。

今回の結果から、衣料用柔軟剤の開発においては、この水素結合ネットワーク形成を阻害するという新たな視点で行なえるようになりました。この研究成果は、超コンパクト化などを可能にするものであり、花王の超コンパクト柔軟剤「ハミングNeo」の開発に応用しています。

なお、本研究の内容は、第63回コロイドおよび界面科学討論会(2011年9月7日~9日)および第43回洗浄に関するシンポジウム(2011年10月26、27日)で発表しています。

研究背景

衣料用柔軟剤が効果を発現するメカニズムは、一般的に「繊維間の摩擦の低減が原因である」といわれていますが、詳細についてはわかっていませんでした。

そこで本研究では、洗たく・乾燥後にタオルや木綿の衣類が硬くなる現象と、柔軟剤でその硬さが解消されることにあらためて着目しました。木綿布は木綿糸からつくられ、木綿糸は多数の微細な単繊維をよってつくられます。硬くなる原因や柔軟剤の作用を詳細に調べるため、この単繊維の状態を直接観察することは非常に困難です。そこで今回は、木綿糸やポリエステル糸の曲げ試験から得られる硬さのデータを詳細に調べることでメカニズムの解明を試みました。

さらに、この方法で柔軟剤の効果発現メカニズムの本質をつかみ、より高性能な柔軟剤開発につなげることを目的としました。

研究結果

本研究では、木綿糸を濡らし、自然乾燥して硬くなった実験サンプル(資料2)を繰り返し折り曲げた時の硬さを測定する曲げ試験(資料3)などで、洗たく・乾燥後に木綿衣類が硬くなる原因と衣料用柔軟剤の作用メカニズムを解明しました。

今回行なった曲げ試験では、主に水素結合ネットワークの有無を調べました。水素結合ネットワークが存在すると、折り曲げる力でその結合が壊れて硬さが減少します。この硬さの減少の有無で、水素結合ネットワークの有無を判断しました。

■洗たく・乾燥後の木綿衣類が硬くなる原因について(資料3、4)

硬くなった木綿糸(実験サンプル)には、曲げ試験の結果から、水素結合ネットワークが形成されていると考えられました。また、水をほとんど吸着しないポリエステル糸や、110℃、減圧条件で完全乾燥して水分子を取り除いた木綿糸では、水素結合ネットワーク形成による硬さの発現が見られませんでした。
すなわち、硬くなるメカニズムは、次のようなステップであると考えられました。

(1)濡れた木綿糸や木綿布が乾燥していく過程で、単繊維間に毛管力(メニスカス力)がはたらいて、単繊維間の距離が縮まる。
(2)木綿単繊維の表面は水分子と親和性が高いので、乾燥後も少量の水分子(結合水)が残り、単繊維間で結合水を介した水素結合ネットワークが形成される。

■柔軟剤の作用メカニズムについて(資料3)

実験サンプルに柔軟剤を十分量添加すると、水素結合ネットワーク形成による硬さの発現が見られなくなりました。したがって柔軟剤の使用で木綿布などをやわらかくするメカニズムは、「結合水を介した単繊維間の水素結合ネットワーク形成を阻害する」ということがわかりました。この作用は、柔軟剤分子が単繊維表面を覆うことによるものと考えられます。

本研究によって、柔軟剤の効果発現に関する主たるメカニズムが明らかになったことから、従来の「繊維同士の摩擦を低減する」ということではなく、「結合水を介した単繊維間の水素結合ネットワーク形成を阻害する」という新しい概念で、柔軟剤が開発できるようになりました。

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。