発表資料: 2010年11月11日

甘草からつくられる自然由来の成分であるβ-グリチルレチン酸に、腋臭や汗臭の原因菌に対する殺菌効果を確認

ニベア花王株式会社(社長・小茂田直樹)は、薬用植物として知られる甘草からつくられる自然由来の成分であるβ-グリチルレチン酸が、腋臭の原因菌のひとつと考えられているコリネバクテリウムキセロシスに対して、有意な殺菌作用を持つことを発見しました。

腋臭・汗臭は、汗の成分が皮膚常在菌によって分解されることで発生し、腋臭の発生に関与する菌としてはコリネバクテリウムキセロシス、汗臭に関与する菌としては黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などが知られています。そのため従来の制汗防臭剤には、イソプロピルメチルフェノールなどが殺菌成分として配合されています。一方、消費者の腋臭・汗臭への意識は高く、62%が「自分のニオイが気になる」、54%が「制汗剤の防臭効果を重視」などと制汗防臭剤への期待が高まっています。また、86%が「制汗剤は効果が同じであれば自然由来の成分のものを選びたい」というように、自然嗜好の傾向があります。

そこで今回、自然由来の成分を中心に、腋臭・汗臭の原因菌に対し殺菌作用や防臭作用のあるものを探索しました。
その結果、甘草からつくられる自然由来の成分であるβ-グリチルレチン酸について、従来の殺菌成分であるイソプロピルメチルフェノールと同等以上の、コリネバクテリウムキセロシスなどに対する殺菌効果が認められました。β-グリチルレチン酸は、これまでも抗炎症作用が知られており化粧品の基剤として使われていますが、このたび制汗防臭剤の殺菌成分として利用できることがわかりました。

なお本成果は、SCCJ研究討論会(2010年11月30日)、および日本薬学会(2011年3月28~31日)において発表する予定です。

研究結果

1.腋臭・汗臭の原因菌に対する殺菌効果

β-グリチルレチン酸(以下、BGA)とイソプロピルメチルフェノール(以下、IPMP)の希釈液と皮膚常在菌を混合して、培養後にその発育の有無を肉眼で観察しました。
その結果、コリネバクテリウムキセロシス(以下、コリネ菌)に対してBGAは、IPMPと同等以上の殺菌効果が得られることが判明しました。同時に黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などに対しても、BGAの抗菌作用が認められました。

また、実際の皮膚での殺菌効果を確認するための実験を行ないました。実験方法は、制汗防臭剤の有効成分である制汗成分クロルヒドロキシアルミニウムとBGAを配合したスプレー製剤を用いて、スプレー噴霧前後での腋の下の菌数を測定しました。測定では、10名の被験者を発汗させたあとに左右の腋の下から菌を採取し、そのあとで片腋のみにBGA配合スプレーを噴霧し、6時間後に再び両腋から菌を採取しました。採取したスタンプ培地を35℃・18時間培養して、コロニー数をカウントしたところ、BGA配合のパウダースプレーは、塗布6時間後の皮膚常在菌数を有意に低下させていました。

2.腋臭防止剤としての有用性

制汗防臭剤の腋臭防止効果を確認しました。
確認方法としては、15名の被験者の両腋にパッドをつけた状態で発汗させ、回収したパッドを半分にカットして、スプレー(制汗成分として汎用されるクロルヒドロキシアルミニウムに殺菌作用のある防臭成分BGAを配合したパウダースプレー製剤)噴霧群、未塗布群に分けて、スプレー前後の臭い強度比較と、35℃・6時間保存したあとの臭い強度比較を行ないました。
その結果、未塗布群では、臭い強度が有意に上昇したのに対して、BGA配合のスプレー塗布群では、臭い強度の増加が抑制されました。

また、このうち特に臭いの強い被験者5名を抽出して比較すると、6時間後の臭い強度は、未塗布群に比べて、BGA配合のスプレー塗布群で有意に低いという結果が得られました。

研究背景

制汗剤の市場および消費者の動向

わが国に制汗防臭剤が登場したのは、今から約40年前のことです。以来1980年代までは、さまざまな香りの付与が求められ、その後の1990年代までは、使用部位や場面の拡大が求められました。それに伴って剤型は、従来のパウダースプレーやロールオン以外にシートタイプやウォータータイプ、スティックタイプなどが開発され、さらに男性用の制汗防臭剤も登場します。そして2000年代までには、「ひんやり感」や「さらさら感」などのより高い機能や効果が求められてきました。

一方こうした製品開発に伴って消費者の制汗防臭剤使用率も増加し、ニベア花王が首都圏在住の女性(12~59歳)を対象に行なった調査では、1980年代の45%から2009年には75%以上の女性が使用していることが判明しています。また臭い意識にも変化が見られ、2004年8月と2009年8月の調査では「自分のニオイが気になる」人が、2004年の56%から2009年には62%に増加しています。また制汗防臭剤の「防臭効果」を重視する傾向も年々強くなり、やはり2004年に45%だったものが、2009年には54%となっています。

こうした中で制汗防臭剤の配合成分への意識も高まり、「殺菌成分」や「消臭成分」の認知度は95%にも及び、さらに「効果が同じであれば、自然由来の肌に安心な成分」のものを選びたいという意識も86%にのぼっています(2010年4月/N=927/全国女性)。

こうした背景から、さまざまな自然由来の殺菌成分をスクリーニングしました。

参考:体の臭いの発生メカニズムと制汗防臭剤

人間の身体の汗腺には、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類があります。このうちエクリン汗腺は、全身のほとんどの皮膚表面に分布し、そこから分泌する汗は、体温調節や手足の滑り止めの役割を持ちます。その99%以上は水分でナトリウムやカリウム、乳酸や尿素などがわずかに含まれる無色透明な液体です。一方アポクリン汗腺は、腋の下や乳輪、外陰部などの毛穴に向けて開き、思春期から活発化して精神の緊張や精神的刺激によって発汗します。成分としては、タンパク質や炭水化物、脂質やアンモニアなどを含んだ乳白色の液体です。

身体の中で汗の臭いが強く出るのは、腋の下と足の裏です。このうち腋の下にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方が存在しますが、足の裏にはエクリン汗腺しかありません。両者ともムレやすく、皮膚常在菌が多いという環境は似ていますが、汗腺の種類が違うことから、臭いの原因物質も違い、そのため当然、臭いも異なります。足裏の臭いの原因物質は、エクリン汗を黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌が分解して発生するイソ吉草酸ですが、腋臭は、アポクリン汗をコリネ菌が分解する中、低級脂肪酸・ステロイドが原因物質といわれています。

エクリン汗もアポクリン汗も分泌直後には臭わず、皮膚の常在菌によって分解されて、臭いの原因物質が発生します。これを防止する制汗防臭剤では、制汗成分が発汗の抑制を行ない、IPMPや塩化ベンザルコニウムなどの殺菌成分が、臭いの元となる皮膚常在菌の抑制をします。さらに、消臭緑茶エッセンスなどの消臭成分により発生した臭いの吸着・包接などの消臭作用によって、汗や臭いの発生を抑制します。

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。