発表資料: 2010年02月23日

加齢で増加する歯周炎の発症メカニズムは、プラークに加え、免疫反応も関係

花王株式会社(社長・尾崎元規)ヒューマンヘルスケア研究センターは、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 原宜興教授と共同で、加齢に伴う歯周炎の増加の原因について発症メカニズムからアプローチし、過剰な免疫反応* が関係することを見いだしました。

* 免疫反応:病原体などの異物(抗原)を、抗体との結合や免疫細胞により、排除しようとする生体の防御反応
抗原:生体が、非自己である異物として認識するもの。病原体やその一部分であることが多い。
抗体:抗原に対して、特異的に反応する物質。特定の免疫担当細胞が産生し、抗原に結合して排除しようとする。

研究背景・目的

歯周病は歯肉炎と歯周炎(歯槽膿漏)の総称で、歯周炎は歯肉や歯槽骨(歯の周囲にあり、歯を支える骨)などの歯を支える土台となる組織が破壊されてしまう病気です。歯周炎は成人が歯を失う大きな原因であり、子供や若者の罹患(りかん)率は少ないものの、加齢とともに増加して40歳以上の約半数が歯周炎に罹患しているといわれています。(平成17年歯科疾患実態調査、厚生労働省)

歯周炎のメカニズムについては、プラーク(歯垢)中の歯周病関連細菌の毒素が歯周組織を刺激して、歯肉の炎症や歯槽骨の溶解が起きることが、知られています。しかし加齢による歯周炎の罹患率の増加については、免疫反応の関与も議論されていますが、詳細は明らかにされておらず、検討を行いました。

研究結果

今回の研究では、まず115名の対象者について、口腔内の診査(歯周ポケットの深さ、出血の有無、プラーク量)、唾液中の歯周病関連細菌の量、血液中の歯周病関連細菌の毒素に対する抗体の量について調査を実施しました。その結果、加齢とともに歯周炎が進行している人の割合が増える傾向を認めました。また歯周炎が進行している人ほど抗体が多いこと、およびプラークが多いことに加えて歯周病関連細菌に対する抗体が多い人ほど歯周炎が進行していること、また歯周病関連細菌の量よりも、その菌に対する抗体の量のほうが歯周炎の進行の程度との関連が強く認められることがわかり、加齢による歯周炎の進行に免疫反応の影響が示唆されました。(図1)



さらに今回の成果として、抗原である細菌の毒素と毒素に対する抗体による免疫反応により実験的に歯周炎を発生させることができる“歯周炎モデル”を、新たに確立しました。このモデルによる検討の結果、あらかじめ抗原により感作させてから抗原を投与し続ける方法や、抗原と抗体を交互に投与する方法で、歯周炎を実験的に発生させることに成功しました。(図2)



以上より、加齢に伴う歯周炎増加の原因のひとつとして、長い年月をかけて人の体内に歯周病関連細菌に対する抗体の量が増えることで抗原を排除しようとする過剰な免疫反応が起こりやすくなり、これにより加齢に伴って歯周炎の罹患率が増加する可能性が考えられました。また歯周炎予防には、歯周炎が進行する歯周ポケットの深い部位における抗原の原因となる細菌の除去に加えて、抗原と抗体に起因する過剰な免疫反応を抑えることが、重要と考えられました。

本研究は、第53回春季日本歯周病学会学術大会(2010年5月14~15日、盛岡)で発表する予定です。(一部は、第131回日本歯科保存学会春季学術大会(2009年6月11~12日、札幌)で発表済み)
本成果は、今後のオーラルヘルスケア商品の開発に応用していきます。

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。