発表資料: 2010年01月21日

花王独自の香り解析技術で、梅の花の香りを分析

■梅の花は、開花直後の朝最も多くフレッシュな香りを放つ
■梅の花の香りの主要成分と、香りの微妙な印象を決める微量成分を特定

花王株式会社(社長・尾崎元規)香料開発研究所は、“人を癒す快適な香り”を求めて、身近な“自然の香り”に積極的に学び研究しています。このたび、和歌山県工業技術センターと和歌山県農林水産総合技術センター果樹試験場うめ研究所との3者共同で、梅の花の香りの採取・解析を行いました。

梅は花を摘むなどの外部ストレスを受けると香りが変化しやすく、自然の姿のままの香りを採取するのが困難です。今回は、自然に咲いている梅の花にこだわり、南高梅について開花段階*1 や開花時間*2 の違いにより香りがどのように変化するのかを調べました。

その結果、開花直後の朝に最も香気量が多く、フレッシュな香りを放つことがわかりました。この梅の花の最高の一瞬の香りを再現するために、主要な23成分を明らかにしたほか、香りの印象に大きく影響する可能性のある72の微量成分を特定しました。このような香りの詳細研究を可能にしたのは、花王独自の香り解析技術「エアロセント技術」です。この研究結果をもとに、より本物に近い優しい梅の香りの再現が可能になりました。

本成果は、香りを楽しむ製品に応用していきます。また、本成果は、香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会(2009年11月7日~9日、奈良先端科学技術大学院大学)で発表いたしました。

*1 ツボミが開き始めた日を初日として、何日後にあたるかを数えた。完全開花は7日後、花びらがすべて落ちたのが13日後だった。
*2 朝(8時30分)、昼(12時30分)、夕方(16時30分)の1日3回、香気成分を解析した。

南高梅の花

南高梅の花

梅の花の開花段階と開花時間による香気変化

南高梅は完全開花直後に香気量は最大になる。(図1) 
さらに完全開花直後(7日後)の1日の香気量の変化を調べると、時間別では朝が最も香気量が多く、官能検査では、最もフレッシュでよい香りだと判断した。(図2)

研究背景

花の香りは、香料においては重要な香りのグループです。フローラルの中で三大花香といわれているバラ、ジャスミン、スズランの香りの研究は盛んで、すでに多くの製品に応用されています。花王は、これまであまり研究されることのなかった“和の香”にも注目しています。淡く優しい梅の花の香りは、奈良時代には多くの歌に詠まれるほど日本人に好まれていました。しかし、主成分に関する研究報告はあるものの、それ以上に詳しい研究はありませんでした。

また、これまでの技術では、解析に必要な香気成分の採取には数~数十時間かかるため、朝昼晩など時間変化による成分の違いを詳細に調べることは困難でした。花王の香り解析技術は、15分で十分な香気量を集められることから、“開花段階”や“開花時間”など花の香気の時間変化に関する詳細研究を可能にしました。

研究方法

ひと口に梅といっても、その品種・系統はよく知られているだけでも300種類以上あります。研究に最適な梅を選定するために、100種類以上の梅を保存・育成している和歌山県うめ研究所の協力のもと、香りの採取・解析を行いました。

最初に、本研究が始まった2月上旬に花が咲く品種の中から、官能的に評価し、香りのよかった13種類について香気量を調べました。最も香気量が多かった南高梅については、さらに開花段階や開花時間について詳しい成分解析を行いました。花王独自の香り成分解析技術「エアロセント技術」により、香気成分の解析にはTDS-Canister法*3 を、微量成分を明らかにするためには大量濃縮法*4 をそれぞれ用いました。

~エアロセント技術~

さまざまな方法を駆使して香り成分を解析する、花王独自の技術。
今回は、どの成分がどのくらい含まれていたかを定量的に把握するのに適したTDS-Canister法と、空気中の微量な香り成分の採取に適した大量濃縮法を使いました。

*3 TDS-Canister法
空気中に漂う成分を正確に把握するために物理吸着法とキャニスター法を併用し、空間中の高揮発非極性成分から低揮発高極性成分までを、広範囲にわたって定量的にとらえる方法。
参考文献:AROMA RESEARCH Vol.3 No.4 347-354,2002

*4 大量濃縮法
花王が独自に調製した大容量吸着管を使用し、採取量を十数倍に高めたもの。 
ニオイを大量採取できることで空間微量成分分析に適する。
参考文献:AROMA RESEARCH Vol.8 No.30 143,2007 (高野熊野でトピックス投稿)

<採取時期> 
2009年2月2日~16日
<採取地> 
和歌山県日高郡みなべ町 農林水産総合技術センター果樹試験場うめ研究所敷地内

研究結果

13種類の梅の花の香気を測定しました。(図3) 
品種別の官能的に知られている香りの違いが、成分の違いとして認識できました。特に白梅と紅梅の香りの違いは、明確な成分の違いに由来することが確認できました。

最も香気量が多かった南高梅については、開花段階と開花時間について香気成分の変化を調べました。完全開花直後の朝が最も香気量が多く、フレッシュな印象の香りを放つことがわかりました。(図1、2)

完全開花直後の朝の南高梅の香りを再現するために、成分を詳しく解析しました。(図4) 
TDS-Canister法により、主要な23成分がどのような割合で香気中に含まれているのかわかりました。さらに香りを再現するために必要な情報を得るために、大量濃縮法を用いて高感度解析を行い、香りの印象に影響している可能性のある72の微量成分が明らかになりました。この中から、実際に香りに影響している成分を見つけることで、より本物に近い香りの再現が可能になりました。

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。