発表資料: 2010年01月14日

歯磨き行動の脳への作用を研究
疲れたあとに歯磨きをすると、脳が活性化し、気分リフレッシュ

花王株式会社(社長・尾崎元規)ヒューマンヘルスケア研究センターは、むし歯や歯周病などのさまざまなお口のトラブルに関する研究や美しい歯に関する研究などを通して、お口の健康価値の提案に取り組んでいます。
このほど、千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター脳機能計測解析研究部門 下山一郎教授と共同で、脳が疲れたあとの歯磨き行動が脳や心理に与える作用を研究し、歯磨き行動が脳を活性化し、気分をリフレッシュする効果を持つ可能性を見いだしました。

今回の研究では、計算作業による疲労付与後に歯磨き行動をしたときの脳への作用を、客観的に評価するため、脳と心理の状態を同時に測定する“統合生理研究手法”を用いて検討しました。脳の活性化は、脳の疲労度や注意力に関係する指標などを用いて評価し、脳の疲労度はフリッカーテスト*1 、注意力は脳波の測定*2 を実施しました。また心理状態は、自己評価を数値化するVAS法*3 により評価しました。

その結果、疲労後に歯磨きをすると、歯磨きしない場合と比べ、脳の疲労は有意に低減しました。また注意力も高まる傾向が認められました。これより、歯磨き行動により脳が活性化したことが推測されました。また心理状態についても、疲労後に歯磨きをすると、リフレッシュ感が有意に高まり、集中力やすっきり感も高まる傾向が認められました。これより歯磨き行動には、仕事や勉強などで疲れた時に脳を活性化し、リフレッシュする効果があると考えられました。

本結果は、IUPS2009第36回国際生理学会大会・第86回日本生理学会大会(2009年7月27日~8月1日、京都国際会館)で発表し、産業衛生学雑誌(第52巻2号、2010年3月発行)に掲載の予定です。


*1 フリッカーテスト                             
脳の疲労を示す指標のひとつ。光のちらつきの速さ(周波数)を変え、ちらついていると認識できる速さを測定。脳が疲れていないときほど、早い光のちらつきを認識。

*2 脳波の測定(事象関連電位;P300潜時)
脳の注意力を示す指標のひとつ。頻発する低い音の合間に、まれに鳴る高い音に集中し、高い音が聞こえた時に発生する脳波の出方により注意力や集中力を測定。

*3 VAS法(Visual Analog Scale)
心理状態の自己申告による評価。用紙に記載された、左端を心理状態が最も悪い状態、右端を最もよい状態とした100mmの直線スケールに、被験者が自分の心理状態に近いところにチェック。

疲労付与(計算作業20分実施)後の、フリッカーテストの様子

疲労付与(計算作業20分実施)後の、フリッカーテストの様子

歯磨き行動による、脳の活性化と気分リフレッシュに関する調査結果

研究背景

近年、歯磨きを1日に3回以上する方が増えています。(1987年13%→2005年21%、厚生労働省 歯科疾患実態調査より) 
また職場で歯磨きする方も増えています。(1998年5%→2009年19%、首都圏女性642名、花王調べ) 
職場では昼食後に歯磨きする方が多いですが、職場で歯磨きをする目的として、“気分をすっきりさせる37%”や“リフレッシュする25%”というように、歯磨き行動を通じた気分の変化を目的としている方も多くいます。(2009年6月、首都圏有職女性125名、花王調べ)

しかし、歯磨き行動が実際に脳に作用して気分を変化させるのかについては、生理学的な研究はほとんどされておらず、このほど検討を行いました。

実験方法

健康な成人男女にインフォームドコンセントを得て、疲労条件として単純計算作業を20分間してもらい、その直後に歯磨き行動をした場合としない場合を設定し、各動作直後の脳と心理の状態を測定しました。なお歯磨きの方法は、一般的なペースト状歯磨き(ミント香味)とハブラシを用い、被験者にいつもと同じ方法で1分間歯磨きをしてもらいました。そして、計算作業後と歯磨き行動後について、脳と心理の状態を測定しました。

【被験者】  
首都圏在住男女17名、21~24歳
【疲労条件】 
ランダムな足し算またはかけ算の下1ケタを、キー入力する作業を20分間続ける。
【測定項目】 
フリッカーテスト、脳波(事象関連電位;P300潜時)、VAS(Visual Analog Scale)

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。