Japan

発表資料:2008年9月11日 ←目次に戻る
室内干しで発生しやすい洗濯物の“生乾きのニオイ”発生に皮膚常在菌が関与
洗濯物に残った汚れを代謝して“生乾きのニオイ”物質を生成していることを解明


 花王株式会社(社長・尾崎元規)ファブリック&ホームケア研究センターは、靴下やトイレのニオイなど、日常生活における嫌なニオイの対策に取り組んできました。
 このたび、洗濯物を室内干ししたときに発生しやすい“生乾きのニオイ”の発生には、皮膚に普通に存在している皮膚常在菌の一種である“表皮ブドウ球菌”が関与しており、洗濯物に残った身体汚れであるタンパク質や皮脂を栄養分としてニオイ物質を生成していることを明らかにしました。
 本研究は、日本繊維製品消費科学会2008年次大会(2008年6月21~22日、名古屋)で発表しました。本研究成果は、ファブリックケア商品の開発に応用していきます。


図1 室内干しで発生する“生乾きのニオイ”に皮膚常在菌が関与
図1 室内干しで発生する“生乾きのニオイ”に皮膚常在菌が関与


■研究背景
~生活習慣の変化に伴って増える室内干し~
 花王は、洗濯行動に関して、最近の消費者実態を調べました(2008年3月、全国222名)。
 その結果、91%の人が室内干しをしていました。室内干しをする主な理由は、「外出するため」「夜に洗濯をするため」など、仕事をしている女性の増加が影響していると考えられました。また、季節によって、「洗濯物に花粉が付かないようにするため」「屋内の乾燥を防ぐため」といった健康上の理由で、洗濯物を室内に干している人もみられました。以上のように、かつては悪天候のためにしかたなく行われていた室内干しが、生活習慣の変化によって増えていることがわかりました。
 また、室内干し経験者の約8割は、室内でタオルや衣類などの洗濯物を干したときに不快なニオイを経験していました。この不快なニオイを「生乾きのニオイ」や「部屋干しのニオイ」などと呼び、多くの人が何らかの対策をとっていることもわかりました。具体的には、89%の人が生乾きのニオイの原因を「菌」と考え、洗濯物を早く乾かすために乾燥機などを使ったり、漂白剤入りの洗剤や抗菌作用がある柔軟剤を使ったりしていました。
 このように多くの人が“生乾きのニオイ”の原因を菌と考えていましたが、実際にも、使用した衣類やタオルに菌が付着していることは、既に知られています。
 しかし、どのような種類の菌がいて、どのような条件でニオイが発生するかといった、詳しい研究はこれまでほとんど行われていませんでした。そこで、本研究を実施しました。


■研究結果
~皮膚常在菌と洗濯後に残った汚れがニオイ発生原因~ (図1)

1.使用後の衣類には、皮膚常在菌の一種であるブドウ球菌が付着
 男性会社員(23~54才、11人)が普段着用している上着のエリ部分から、プレート容器に入った寒天培地を対象物にスタンプして菌を写し取る“スタンプ法”により菌を採取し、培養後に菌数を測定しました。
 その結果、多くの生菌が検出され、上着のような一見乾燥した衣類表面にも菌が存在することが明らかになりました。そこでブドウ球菌だけが増殖する卵黄加マンニット食塩培地で培養を行い、菌の種類を調べたところ、皮膚に常在している菌の中での割合が高いといわれているブドウ球菌の存在を確認しました。さらに、これらのブドウ球菌を遺伝子解析により同定したところ、皮膚に常在している表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)や、Staphylococcus capitisStaphylococcus capraeStaphylococcus warneri が確認されました。このことから皮膚上の菌が上着のエリに付着した可能性が示唆されました。

2.皮膚常在のブドウ球菌が、身体の汚れを栄養分にして、ニオイが発生
 ブドウ球菌が、“生乾きのニオイ”発生にどう関係するかを調べるため、身体から出る衣類の代表的な汚れとして知られているタンパク質と皮脂の影響について調べました。衣類に見立てた布の上に、タンパク質汚れのモデルとしてL-ロイシンを、皮脂汚れのモデルとしてオレイン酸をそれぞれ塗布し、そこに上記の男性会社員の衣類から得られた表皮ブドウ球菌を培養しました。
 その結果、汚れなしで表皮ブドウ球菌だけを培養した場合、ニオイの発生はありませんでしたが、L-ロイシンもしくはオレイン酸を加えて表皮ブドウ球菌を培養した場合にのみ、“生乾きのニオイ”の成分の1つである吉草酸(納豆様酸臭)や垢のようなニオイが発生しました。
 以上より、菌が育成するのに十分な湿気がある洗濯物では、皮膚常在菌の一種である表皮ブドウ球菌類が、洗濯物に残った身体の汚れ(タンパク質、皮脂)を代謝し、“生乾きのニオイ”物質を生成することが“生乾きのニオイ”発生の原因の1つになっていると考えられました。

【参考】
除菌消臭スプレーのニオイ発生防止効果

 上記の結果より、“生乾きのニオイ”の予防には、汚れを残さず衣類をきれいに洗うことや洗濯物を除菌することが重要と考えられます。また、漂白剤や漂白剤入りの洗剤などの使用も効果的です。
 しかし、実際は、洗濯機に洗濯物を多く詰め込んでしまったために、汚れや菌を十分に落としきれないことなどがあります。このような場合は、洗濯機から取り出したあとに除菌することも効果的だと考えられ、洗濯直後の濡れた衣類に除菌消臭スプレーをし、その効果を調べました。
 その結果、植物原料からつくられた除菌剤を含む除菌消臭スプレーの使用によって、ニオイの発生を抑えられることが確認されました。これより、除菌消臭スプレーの新たな使い方として、干した直後の洗濯物への使用を提案していきたいと考えています。


お問い合わせ
花王株式会社 広報部
電話 03-3660-7041~7042

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。