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発表資料:2008年1月17日 戻る
毛髪の老化現象を遺伝子レベルで解析
■加齢にともなう「髪のハリコシ低下」に関係する遺伝子としてVEGFを特定
■毛根中のVEGFの作用が減ると、毛髪が細くなってハリコシがなくなる


 花王株式会社(社長・尾崎元規)生物科学研究所とビューティケア研究センターは、加齢にともなう髪の悩みについて研究しています。男女ともに、加齢とともに毛髪が細くなり、ハリコシがなくなってしまいます。しかし、その原因は分かっていませんでした。
 このほど遺伝子レベルの解析を行ない、加齢にともなう「髪のハリコシ低下」に関係する遺伝子として、血管の形成を促進する作用が知られている遺伝子「VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor;血管内皮増殖因子)」を特定しました。
 そして、毛根におけるVEGFの作用(遺伝子発現)が加齢にともなって減少するため、毛根で作られる毛髪が細くなり、ハリコシが弱くなることを見出しました。またハリコシのある人とない人を比較すると、加齢による VEGF作用の減少の程度はハリコシのない人が顕著でした。これにより、毛根においてVEGFの作用を促進することができれば、太くハリコシの強い毛髪を生み出すことが可能と考えられました。

 VEGFが毛髪の太さやハリコシを維持する作用機構については、VEGFは血管の形成を促進することが知られていることから、血流循環を促進して毛根に栄養を多く供給させていることが考えられます。また、もう一つのVEGFの作用機構として、毛髪を構成する細長い細胞(コルテックス細胞)同士の接着に関係していることを認めました。これはVEGFの新たな機能として注目しています。

 本結果は毛髪研究国際学会(2007年6月13~16日 カナダ・バンクーバー)、第127回日本薬学会年会(2007年3月28~30日 富山)において発表しています。今後、本成果は、毛髪を太くしハリコシを増強する薬剤の開発や、育毛料やコンディショナーなどのヘアケア商品の開発に応用していきます。




■研究背景
 加齢にともなう毛髪のハリコシ低下の主な原因は、加齢にともなって毛髪の太さが細くなり、毛髪1本1本の強度が柔らかくなるためです。この加齢とともに毛髪が細くなる現象は、男性ではより顕著に認められます。(男性1,177名、女性18,262名、1987年 花王調査)
 これより「髪にハリコシがなくなる」悩みは男女に共通していると考えられますが、実際に「髪にハリコシがなくなる」と、髪がペチャンとなってしまってヘアスタイルにボリュームが出ないため、大きな悩みになります。また、この悩みは、加齢とともに急増し、40歳代後半の女性では約70%が「髪にハリコシがなくなった」と実感しています。(首都圏女性451名、20~49歳、2006年6月 花王調査)
 毛髪は、毛根から1日当り約0.3㎜ずつ生み出されています。しかし何故、加齢とともに細くてハリコシがない髪が生えてくるかは、ほとんど分かっていませんでした。
 そこで、本研究では、加齢に伴う毛髪のハリコシ低下の根本的な原因を探ることを目的に、ハリコシに影響する毛根中の遺伝子を探索しました。


■研究方法
 遺伝子が作用すると、その遺伝子情報により対応したRNA(ribonucleic acid;リボ核酸)が合成されますが、これを「遺伝子発現」と呼びます。今回、ヒトの毛根内の遺伝子発現パターンの解析を実施し、各遺伝子の作用の程度(遺伝子発現量)を調べました。
 具体的な方法としては、11~70歳の女性、延べ126人の方からインフォームドコンセントを得て、側頭部から後頭部の毛髪をまんべんなく一人当たり約50本、毛抜きで抜かせていただきました。抜いた毛髪から、毛髪が作られる毛根部を採取し、毛根部からRNAを抽出しました。そして、ヒトの約5万種類の遺伝子発現量を網羅的に解析できるDNAマイクロアレイ法、及び定量的RT-PCR法を用い、毛根の遺伝子発現量を解析しました。
 この手法で、加齢とともに遺伝子発現量が変化する遺伝子を解析した結果、10代に比べて1.6倍以上の発現変化が認められた遺伝子として、1,915種類の遺伝子が見いだされました。
 さらに、この1,915種類の遺伝子について、毛髪の太さ(直径)とハリコシ(専門家による官能評価、曲げ剛性値)との関係を検討し、加齢で変化するハリコシに関連する遺伝子を特定しました。


お問い合わせ
花王株式会社 広報部
電話 03-3660-7041~7042

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。