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発表資料:2007年11月5日 ←目次に戻る
口内環境から全身の健康を考えたオーラルケア素材を発見
特定の糖アルコールが、カンジダバイオフィルムに対し殺菌剤を浸透しやすくする


 花王株式会社(社長・尾崎元規)パーソナルヘルスケア研究所は、徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部口腔顎顔面補綴(ほてつ)学分野・市川哲雄教授と共同で、オーラルケア素材の1つとしてエリスリトールについて研究を進めています。
 このたび、エリスリトールが、カンジダ菌が作るバイオフィルム*に対して、殺菌剤を浸透しやすくする作用をもつことを見出しました。
 この作用は、同じ糖アルコールのキシリトールやソルビトールと比べて、高いことが分かりました。また作用機構は、エリスリトールがバイオフィルムの構造強度に何らかの変化を与えたためと考えられます(図1、2)。

 カンジダ菌は口の中にも存在する日和見感染菌(普通は病原性を示さないが、人の抵抗力が弱ると感染する菌)ですが、義歯(入れ歯)の表面でバイオフィルム(カンジダバイオフィルム)を作ると、義歯洗浄剤等に含まれる殺菌成分などの薬剤がバイオフィルム内部まで浸透しにくいため、十分な効果が得られにくいことが指摘されています。
 エリスリトールは、虫歯になりにくい(非う蝕性)糖アルコールであり、口内環境から全身の健康を考えたオーラルケア素材として応用が期待されます。
 本研究成果は、第127回歯科保存学会(11月8~9日、岡山)にて発表いたします。

*バイオフィルム:細菌により作られる集合体で、様々な表面に付着します。義歯の表面に付着するバイオフィルムは、歯に付着する歯垢などの細菌の集合体と同じ構造で、細菌が産生した不溶性グルカン等の菌体外多糖からなる強固な付着物として存在しています。


■研究背景
 高齢化社会の到来と共に、義歯(入れ歯)の使用者は年々増加すると考えられます。特に、65歳以上の高齢者では60%以上の方が義歯を使用しています(平成17年歯科疾患実態調査報告 厚生労働省医政局歯科保健課編より)。
 義歯には、歯に付着する歯垢と似た細菌の集合体(バイオフィルム)が付着します。義歯装着時には義歯と口腔粘膜との間に唾液の浄化作用が及びにくいため、バイオフィルムが形成されやすく、口内環境が悪化する要因となります。
 口腔内に存在する細菌は、約600種類以上が存在するといわれていますが、そのなかにはカンジダ菌などの日和見感染症を引き起こす細菌も含まれています。カンジダ菌は人の口腔や消化管、膣、皮膚などに存在する常在菌ですが、義歯性口内炎や誤って気管の中に入ってしまうと肺炎(誤嚥性肺炎)を起すことや、腸管膜障害から細菌の転移をきたし重症感染症を引き起こすことが知られています。市川哲雄教授の調べでは、老人病院入院患者の約半数以上の口腔内から、カンジダ菌などの日和見感染菌を検出しています。
 義歯に形成されたバイオフィルムを除去するには、ブラッシング等による物理的除去や義歯洗浄剤等による化学的除去があります。しかしながら、カンジダ菌のバイオフィルムは、義歯素材の1つであるレジン表面に付着し、菌体外多糖によって覆われています。そのため義歯洗浄剤等に含まれる殺菌成分などの薬剤は、バイオフィルム内部まで浸透しにくく、十分な効果が得られにくいことが指摘されています。
 以上より、高齢化社会を背景とした口腔衛生対策の1つとして、全身の健康にも影響を与えるカンジダ菌のバイオフィルムに着目しました。


<図1.カンジダバイオフィルム (電子顕微鏡写真)>



<図2.カンジダバイオフィルムモデルに対する糖アルコールと殺菌剤の作用>

お問い合わせ
花王株式会社 広報部
電話 03-3660-7041~7042

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。