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特集2 エコナについて

2009年9月、花王はドイツのリスク評価研究所が公表した化学物質に関する最新の研究結果を受けて、エコナ関連製品の製造・販売を中止し、翌10月には特定保健用食品(以下、トクホ)許可の失効届けを提出しました。この一連の出来事と花王の対応について、多くのステークホルダーの皆さまに、ご心配、ご迷惑をおかけしましたことを、まずは心よりお詫び申し上げます。
販売中止以降、花王では、本件への対応および今後に向けた体制を全社的に構築してまいりました。ここでは、中止に至った経緯と、中止を発表してからの当社の対応、今後の取り組みについて、そしてステークホルダーからのご意見を報告させていただきます。

販売中止に至った経緯

エコナ油にグリシドール脂肪酸エステルが含まれていることを確認

2009年3月にドイツのリスク評価研究所BfR※1(以下BfR)が、精製油脂などにグリシドール脂肪酸エステルという化学物質が含まれていることを公表しました。グリシドール脂肪酸エステルは、発がん性を含め、安全性への懸念を示す報告はないものの、体内で分解されると、発がん性があるといわれているグリシドールに変化する可能性を指摘されています。そのため、万が一の事態を想定して、BfRでは関連業界に対してグリシドール脂肪酸エステルの低減対策の必要性を提唱しました。
こうした情報を受け、花王でも自主的にエコナ油を分析したところ、グリシドール脂肪酸エステルが精製工程で生成され、その含有量が一般食用油と比べて多く含まれていることが判明しました(一般食用油の0.5~9.1ppmに対して、エコナ油は91ppm※2)。花王はこの結果をすぐに厚生労働省へ報告し、2009年7月および8月の食品安全委員会合同専門調査会で検討が行なわれました。

※1 BfR(Bundesinstitut für Risikobewertung)
ドイツ連邦リスク評価研究所。

※2 91ppm=0.0091% 3-MCPD換算値。

エコナ油の安全性と製造・販売を中止した理由

エコナ関連製品の安全性については、1998年のエコナ油のトクホ表示許可申請時から多くの評価を積み重ね、科学的根拠と客観的評価に基づいて、安全性に問題がないことを確認しています。たとえば、一度に多量に食べた場合や長期間食べ続けた場合の影響、一生涯毎日摂取した場合の発がん性、生殖毒性(世代を越え、子どもへ影響を与えるかどうか)、遺伝毒性(遺伝子に障害を与えるかどうか)などを試験しています。いずれの試験も、GLP基準※3適合の機関において実施され、特に発がん性試験においては世界的に認められている安全性試験法が用いられました。
現時点で、体内においてグリシドール脂肪酸エステルがどのように代謝されるのか、グリシドールにどの程度分解されるかどうか、知見がほとんどなく、実験方法も確立していません。仮に、体内でグリシドールに変わるとすると、発がん物質としてリスクが評価され、暴露マージン(MoE)※4が適用されます。MoEとは、発がん物質の評価に用いられる定量的なリスクの評価の手法で、JECFA※5やEFSA※6等で国際的にも採用されている方法です。これは動物において確認した腫瘍のできる量をヒトの推定摂取量で割って算出される値で、一般に10,000を超えると健康上の懸念がないと考えられています。エコナ油で、グリシドール脂肪酸エステルが100%グリシドールに変わるとする最悪のケースの場合、MoEは約250でした※7
たとえば酒類中のエチルアルコールやコーヒー中のカフェ酸のMoEは3~90※8ですが、私たちはこれらの食品を日常的に摂取しており、規制されていません。また、アクリルアミドという物質が新たな発がん物質として話題になりましたが、これはMoEで75~300(摂取量によって異なる)という数字です※9。アクリルアミドは、アミノ酸と糖類を多く含む食品を高温で加熱すると生成するもので、揚げたジャガイモやビスケットに多く含まれており、国際的に低減策は講じられていますが、規制は行なわれていません。
エコナ油の安全性試験はグリシドール脂肪酸エステルを含有した状態での試験で、一般食用油と比較して安全性に問題は認められていませんが、これらの数値からもエコナ油のグリシドール脂肪酸エステルを低減する措置が必要であるという判断から、製造販売中止に踏み切りました。すでに、グリシドール脂肪酸エステルを一般食用油並みの10,000以上になるように、含有量のめどがつき、再発売に向けた取り組みをしています。

※3 GLP基準(Good Laboratory Practice)
「優良試験所基準」などと訳される。試験が正確かつ適切に行なわれたことなどを保証するための基準。

※4 暴露マージン(MoE)
動物において確認した腫瘍のできる量をヒトの推定摂取量で割って算出される値。

※5 JECFA
国連食糧農業機関(FAO)および世界保健機構(WHO)の合同食品添加物専門家会議。

※6 EFSA
欧州食品安全機関。

※7 内閣府食品安全委員会「第62回新開発食品・第75回添加物合同専門調査会」において、エコナ油で、グリシドール脂肪酸エステルが100%グリシドールに変わるとする最悪のケースの場合の算出されたMoE値が報告された。

※8 米国人の平均1日暴露量からMoEを計算した値。
The Carcinogenic Potency Database(CPDB)別ウィンドウを開きます

※9 WHO FOOD ADDITIVES SERIES:55, Safety evaluation of certain contaminants in foods, Prepared by the Sixty-fourth meeting of the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives (JECFA)
農林水産省ウェブサイト JECFAの評価と勧告別ウィンドウを開きます

特定保健用食品の失効届けを提出

このようにグリシドール脂肪酸エステルの含有量をできるだけ早く低減するために製造・販売を一時中止し、そのことを2009年9月16日に発表したのですが、コミュニケーションの至らなさから、多くのステークホルダーの皆さまに不安と心配をおかけしてしまう結果となり、発表翌日の1日で花王に寄せられたお問い合わせの電話の総コール数は従来の1年分に相当する16万件を超えました。予想をはるかに上回る混乱が、花王のみならず行政や食用油業界にも飛び火してしまったことを受けて、2009年10月8日、エコナ関連製品のトクホ許可失効届けを提出しました。

失効届け提出後の花王の対応

現在、花王では、すでにグリシドール脂肪酸エステルの含有量低減のめどがつき、再発売に向けた取り組みを進めています。グリシドール脂肪酸エステルを低減した上で、商品としての安全性と有効性に関して再度知見を整理し、トクホの新規申請を行ないます。
再び消費者の皆さまの健康な暮らしに貢献できる機能性食用油の提供ができるよう、努めてまいります。
さらに、機能性食用油に加えて、皆さま一人ひとりの状況に応じた食生活提案ができる新しい情報サービスを提供することで、現代の日本人がかかえる生活習慣病の予防や改善に貢献できるよう、全力で取り組んでまいります。

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